【7月3日 AFP】ドイツ南西部シュツットガルト(Stuttgart)の上級地方裁判所は2日、ロシア情報機関のスパイ活動に20年以上従事していた罪に問われた夫婦に禁錮刑を言い渡した。この事件は冷戦終結後ドイツで明らかになった最大のスパイ事件の1つとされている。

 夫婦は「アンドレアス・アンシュラク(Andreas Anschlag)」と「ハイドラン・アンシュラク(Heidrun Anschlag)」というコード名だが、それ以外の詳しい身元は明らかになっていない。「アンシュラク」はドイツ語で「攻撃」という意味。裁判所は夫のアンドレアス被告に禁錮6年6月、妻のハイドラン被告に禁錮5年6月の判決を言い渡した。

 2人はソ連の情報機関・国家保安委員会(KGB)によって1988年に当時の西ドイツに送り込まれ、後に後継機関であるロシア対外情報局(SVR)のために北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の政治・軍事機密を入手していたとされる。NATO・EUの東欧・中央アジア諸国との関係に関するものが特に多かったという。

■実の娘にも正体を明かさず

 2人は南米出身のオーストリア人を装い、隠密行動の隠れみのとして「中流階級の生活」を送っていたと検察側は主張した。アンドレアス被告は工学の教育を受け、自動車産業で働いていた一方、ハイドラン被告は専業主婦だったという。2人の「二重生活」については実の娘でさえ知らなかったと報じられている。

 夫婦は2008~11年にかけ、オランダ外務省職員から入手した機密文書をロシア側に渡していたとされる。ドイツ連邦検察当局によると、2人は機密文書を特定の木の下などの秘密の受け渡し場所に置き、独西部ボン(Bonn)のロシア総領事館員らがこれを回収していた。

 ロシア側との連絡は、短波の無線通信や衛星電話端末へのメッセージに加え、示し合わせたユーザーネームを使った動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)上でのコメントを通じて行われていたとされる。

 両被告は自分たちの身元について固く口を閉ざしたままだが、弁護人は2人がロシア市民権を持っていると明かしている。裁判長は両被告に「裁判所はあなた方の本当の身元を明らかにすることはできなかった。出生地も、本名も分からないままだ」と述べた。

■米FBIの情報提供で発覚

 連邦検察当局によると、2人の隠密行動については、ここ3年間のものしか明らかになっていないという。ドイツの国内情報機関は、米国内で活動していた複数の露SVR情報員を特定した米連邦捜査局(FBI)からの情報提供を受け、2人を発見した。

 ドイツの大手ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)はこの裁判を「冷戦終結後で最も劇的なものの1つ」と表現している。(c)AFP