【5月30日 AFP】(一部訂正)「ゴールライン・テクノロジー(GLT)」が完全に信頼できるシステムではないと訴える記事が29日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載され、同システムのサッカーへの導入について、科学的な議論が起こっている。

 科学記者のニック・フレミング(Nic Fleming)氏は同誌の記事で、2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)でイングランド代表のフランク・ランパード(Frank Lampard)によるゴールが、審判によって有効とされなかった時のようなジャッジミスがGLTによって完全に無くなると保証することは、ファンに誤解を与えることだと書く。

 GLTは複数のカメラがボールの軌道を追って、ゴールラインを超えた瞬間に審判に通知が送られるという仕組みとなっており、6月にブラジルで開催されるコンフェデレーションズカップ2013(Confederations Cup 2013)で導入される他、イングランド・プレミアリーグでも8月に開幕する13-14シーズンからの使用が決定している。

 また、同じようなシステムは、すでにテニスやクリケットの試合で活用されている。

 しかしイングランド・フットボールリーグ1(3部)のシェフィールド・ユナイテッド(Sheffield United)ファンを公言するフレミング氏は、GLTの映像がテレビで放送される時、多くの視聴者はそれがコンピューターで加工された一連の2次元画像だとは思わず、実際に起きたリアルタイムの映像だと誤解するのではないかと言う。

 フレミング氏はAFPとの取材で、「このテクノロジーは間違いなく人間の審判よりも信頼できるものだが、重要なポイントは、GLTが100%確実な結果が出せるものではないということだ。ごく稀にかもしれないが、GLTでも誤審をしてしまうことはある」と話した。

 そして同氏は、視聴者がGLTの判定にも科学的な誤差が存在することを理解できるよう、テレビで放送されるGLT映像には注意書きが含められるべきだと訴える。

「そうすることによって視聴者は、科学による分析結果は決定的な答えではなく、確率に基づいていると理解することができる」

 長年の議論、そしていくつかの審判の判定ミス疑惑を経て、国際サッカー連盟(FIFA)は昨年、ようやくGLT導入の許可を出した。コンフェデレーションズカップはFIFAの公式大会としては、GLTが使用される2度目の大会となる。

 GLTは2012年に日本で開催されたクラブW杯(2012 FIFA Club World Cup)でも導入されたが、同大会期間中に起用される機会は一度もなかった。(c)AFP