【5月24日 AFP】つるはしで流氷を砕きながら、タイヤを浮き輪のように膨らませた「特製バス」で北極を横断し、ロシアからカナダまで全長4000キロを走破できることを、ロシアのチーム「Marine Live-Ice Automobile Expedition」が証明した。

 横断には、時速10キロでしか進まない特別製の車両2台が使われた。メンバー7人とディーゼル燃料3トンを積んで約2か月半前、セヴェルナヤ・ゼムリャ(Severnaya Zemlya)諸島でロシアの砕氷船から降ろされ、それから70日間をかけて北極を通過し、カナダ側の北極圏レゾリュート湾(Resolute Bay)に到着した。

 カナダの首都オタワ(Ottawa)で14日に会見したチームリーダーのVassili Ielaguine氏によると、車両にはトヨタ製の2Lエンジンと、09年にロシア~北極間往復遠征を行った際に使った試作車の部品が用いられた。

 旅の途上で出会ったホッキョクグマやアザラシは、まったく攻撃的な素振りは見せなかったとされ、また最も印象的だった光景は、カナダ領北極圏で見たセイウチの群れと、満天のオーロラだったという。

 途中、「天に救われた」と思える場面もあった。渡るには危険すぎる氷の割れ目が目の前に現れた時だ。燃料が尽きてしまう恐れもあったが(渋々)迂回しようとした矢先に、突然、足元の氷盤が移動し、目の前にあった亀裂がふさがったのだ。一気にギアを入れてチームは渡りきった。その数分後、車両の背後で割れ目は再び現れたという。

 タイヤは浮き輪の役目を果たすようになっていたが、サスペンションを完全に凍らせたくなかったため、水中に落ちることは避けていた。そうした緊急事態に備え、車両2台をロープでつなぎ、片方が落ちても、もう片方で引き揚げられるようにしていたという。

 2台は現在、温かい歓迎を受けたレゾリュート湾に保管されている。隊員ともども休息した後、来年2月に西へ向かってベーリング海峡(Bering Straight)を通り、復路に着く。

 ロシアの寓話に登場する魔法のストーブに乗って旅する怠け者にちなんで「Iemelia」号と名付けられたこの車両には、商業的成功も待っているかもしれない。チームリーダーのIelaguine氏は帰国後、モスクワ(Moscow)で、車両の製造に関心を持つ投資家と会う予定があるという。(c)AFP/Michel Viatteau