【1月30日 AFP】 フランスの国民議会で29日、同性婚および同性カップルによる養子縁組を認める法案の審議が始まった。フランスではここ数か月にわたり、同法案の是非をめぐって国を二分する激しい議論が続いている。

 社会党のフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領が昨年の選挙で公約として掲げた同法案をめぐっては、ここ数週間、賛成派と反対派の両方が数十万人規模の街頭デモを繰り広げてきた。

 これまでの世論調査では、同性婚を支持する意見が常に過半数を占めてきたが、カトリック教会が主導し中道右派の主流野党勢力も後に支援するようになった反対運動も徐々に勢いを増し、2週間前にはパリ(Paris)で大規模な抗議デモが開かれた。

 9月にはリヨン(Lyon)大司教のフィリップ・バルバラン(Philippe Barbarin)枢機卿が、法案は結婚の概念を覆し、近親相姦や複婚への道を開くものだとして批判。これに対し、同性愛者であることを公言する数少ない政治家の一人であるパリのベルトラン・ドラノエ(Bertrand Delanoe)市長は、「自制を失った」に違いないと枢機卿を非難した。

 法案賛成派の非難の矛先は、有名実業家のセルジュ・ダッソー(Serge Dassault)氏にも向けられた。ダッソー氏は、法案が議会を通過すれば、フランスは古代ギリシャの崩壊を招いたのと同じ退廃に溺れて滅びるだろうと示唆し、「フランスは同性愛者の国になる。そして10年後には誰もいなくなるだろう。ばかげたことだ」と発言していた。

 同性婚賛成派の運動は比較的穏やかだが、反対派の抗議デモの目の前でキスをするレズビアン(女性同性愛者)カップルを写した象徴的な写真を生み出している。この写真はAFPのジェラール・ジュリアン(Gerard Julien)カメラマンが撮影した。

 一方、オランド大統領は同法案支持の立場を断固として崩していない。大統領のパートナー、バレリー・トリルベレール(Valerie Trierweiler)さんは、新法が制定された暁には、大統領が同性愛者の友人の結婚式に参加するつもりであることを明かしている。

 議会の反対派はこれまで5000件もの修正案を提出するなどして、審議の妨害を試みてきたが、こうしたゲリラ戦法が法案に大きな影響を与える可能性は低そうだ。(c)AFP/Angus MACKINNON