【12月14日 AFP】英ロンドン(London)で2006年にロシア治安機関の元職員、アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏が放射性物質で毒殺された事件で、ロシア政府の関与を示す証拠を英政府が把握していたことが、13日に開かれた予備審問で明らかになった。また、リトビネンコ氏が英秘密情報部MI6とスペイン情報部の双方と関係していたことも指摘された。

 この事件は2006年11月、ロシア連邦保安局(FSB)元職員のリトビネンコ氏(当時43)が、高い致死性を持つ放射性物質「ポロニウム210」を飲まされ、ロンドン市内の病院で死亡したもの。来年5月に始まる本審に先だって、13日にロンドンで予備審問が開かれた。

 事件担当弁護士のヒュー・デイビーズ(Hugh Davies)氏は、英政府が提出した機密文書について「リトビネンコ氏の死に対してロシア政府に責任があることを立証できる」ものだと証言した。

 リトビネンコ氏はMI6と数年間に及ぶ関係を結んでおり、「マーティン」という名のMI6職員と定期的にロンドン中心部で会っていたという。また、死の少し前には露マフィアを捜査していたスペイン情報機関とも接触していたという。

 予備審問後、リトビネンコ氏の妻マリナ(Marina Litvinenko)さんは弁護士を通じて、審問では「現実に迫っていた生命の危険」からリトビネンコ氏を保護する義務を怠ったMI6の責任も追及されるべきだとのコメントを発表した。

 予備審問は英国の法律に基づき、リトビネンコ氏の変死をめぐる事実を明らかにするもので裁判ではないため、証言内容によって刑事責任や民事責任を問われることはない。

 事件をめぐり英警察は、元FSB職員のロシア人実業家、アンドレイ・ルゴボイ(Andrei Lugovoi)氏をリトビネンコ氏殺害の重要参考人と断定したが、ロシア政府はルゴボイ氏の身柄引き渡しを拒否。これにより英露関係は冷却状態に陥っている。(c)AFP