【4月13日 AFP】スイス・チューリヒ(Zurich)のビュールレ美術館(Foundation E. G. Bührle Collection)から2008年に盗まれた絵画4点のうち、最後まで見つかっていなかったセザンヌ(Paul Cezanne)の絵画がセルビアで発見された。セルビア当局が12日、首都ベオグラード(Belgrade)で記者会見して明らかにした。

 発見された絵画はセザンヌの「赤いチョッキを着た少年(The Boy in the Red Vest)」(1888-90)。記者会見した検察官によれば、スイス人の専門家による鑑定で本物だと確認された。推定価格は約1億ユーロ(約106億円)。絵画は警察が追っていた容疑者の車の中に隠されていた。

 フランスの後期印象派の画家セザンヌのこの作品は、2008年2月にドガ(Edgar Degas)、ゴッホ(Vincent van Gogh)、モネ(Claude Monet)の作品とともにビュールレ美術館から盗み出された。近代西洋美術史の巨匠4人による作品4点の盗難は当時、ヨーロッパ史上最大の美術品盗難事件とされた。

 セルビアのイビツァ・ダチッチ(Ivica Dacic)内相によれば、警察の組織犯罪対策部は12日夜、容疑者のセルビア人4人を逮捕した。会見では見つかった絵画と、容疑者逮捕の様子を録画したビデオテープが公開された。絵画の傍らには覆面をした警備の警察官が立っていた。

 検察官によれば、2年間にわたる捜査の過程で、この絵画を300万ユーロ(約3億2000万円)で売却する取引計画が浮かび上がった。取引相手もセルビア人とみられ、容疑者らはすでに140万ユーロ(約1億5000万円)を受け取っていたという。

 容疑者らは絵画の引渡し準備中に逮捕された。ダチッチ内相によると、逮捕の際、150万ユーロ(約1億6000万円)と大量の武器や弾薬も押収された。

 2008年にセザンヌの絵画と同時に盗まれたのは、モネの「ベトゥイユ近辺のひなげし(Poppies near Vetheuil)」(1879)、ドガの「ルピック伯爵と娘たち(Count Lepic and his Daughters)」(1871)、ゴッホの「花咲くマロニエの枝(Chestnut in Bloom)」(1890)の3作品。

 スイス警察の当時の発表では、武装した3人の覆面の男がビュールレ美術館に押し入り、絵画4点を盗み出した。犯行グループはスラブ訛りのドイツ語を話していたという目撃証言もあった。同警察は数日後に、チューリヒ市内の精神病院の駐車場に止めてあった自動車の後部座席からモネとゴッホの作品を発見したと発表した。

 ダチッチ内相によれば、ドガの作品も2009年に発見されている。(c)AFP

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