【11月11日 senken h】 愛の表現もさまざまだが、子供の頃を思い返してみても直接的だったり、逆説的だったりいろいろだ。ベストアンサーのない十人十色な愛のカタチを、スクリーンを通じ自身に照らし合わせてみては。そんな3作をピックアップ。

■『ハラがコレなんで』<公式サイト>
 物語の幕開けには少々驚かされるが、話の展開に伴い笑いと涙が混在してしまうのが「ハラがコレなんで」。24歳、職なし、夫なしとナイナイづくしの妊婦(仲里依紗)。「粋」を信条に日々人助けに奔走するその姿は、登場人物ばかりか観客までもいつしか「良い風が吹くまでど~んと」構えてみたくなる。とりわけ不器用な大人の恋には、もどかしさを感じつつも声援を送りたくなる。香港やロッテルダムの映画祭で新人監督としては異例の特集上映が組まれるなど、世界での評価も高い石井裕也の新作だ。

■『ハートブレーカー』<公式サイト>
 フランス映画界きっての若手俳優ロマン・デュリス(Romain Duris)と、「シャネル(CHANEL)」とのコラボやシンガー、そしてジョニー・デップのパートナーとしても知られるヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)が主演の恋のゲームは「ハートブレーカー」。不幸な恋をする女性たちの味方と称する「別れさせ屋」稼業のアレックス。完璧に仕事をこなしていたはずの彼の前に出現した新ターゲットは、かなりリスキーだが魅力的な女性。10日後に控えた彼女の結婚前に、彼は任務を完了できるのだろうか。シャネルや「ディオール」「セリーヌ(CELINE)」など、ヴァネッサの衣装も注目。

■『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』<公式サイト>
 哲学者ジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)と、今なお読み継がれる著書『第二の性』で脚光を浴びた哲学界のミューズ的存在、シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)。1929年パリ・ソルボンヌ大学での2人の運命的な出会いから、知的で難解な「新しい愛のかたち」をひも解いたのが本作「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」。カフェ文化盛んな当時の著名人たちの交流関係も伺い知れる機会かも。02年以来、シャネルのミューズの1人として活躍するアナ・ムグラリス(Anna Mouglalis)演じるボーヴォワールが論じた「女性の自立」という言葉の裏にあるさまざまな苦悩に、共感を覚える女性も多いのでは。(c)senken h / text : 宇佐美浩子


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