【11月7日 AFP】露モスクワ(Moscow)で4日、520日間にわたる火星探査模擬実験が無事終了したが、実験に参加したロシア、中国、イタリア、フランスの男性クルー6人の「火星への旅」は順風満帆というわけにはいかなかった――。

 この実験「マーズ500(Mars-500)」は、ロシアが約25年後をめどに計画している火星有人探査に向けて世界各地で行われている実験の1つ。狭い空間に集団が長期間が押し込められたときに、ストレスや隔離された状況からどのような長期的な影響が出るかを調べるのが主な目的だった。

 実験を計画・主導したロシア科学アカデミー生物医学研究所(Institute for Biomedical Problems Russian Academy of ScienceIBMP)のアレクサンドル・スボロフ(Alexander Suvorov)研究員は、ミッション中、クルーの神経をすりへらすような出来事が幾度かあったことを明かした。

■作業分担やメールの数に不満や嫉妬

   「作業量が常に公平に分配されていたわけではなかったため、クルー間やと司令部との間で衝突が起きることもあった」と、スボロフ氏は露ウェブサイト「gazeta.ru」に語った。「一部のクルーがたくさんの作業を行わなければならない一方、受け身的な役割の多いクルーもいた」

 ただ、身体的な健康被害に苦しんだクルーはいなかった。スボロフ氏によると、「われわれは1つのチームであり続けた。分裂して複数のグループになることはなかった」という。

 だが同氏は、家族や恋人から届くメッセージの数がより多いクルーに対し、ごく自然な嫉妬が生まれたことを認めた。これは、招集された若い兵士たちの間で最初の数か月に発生する問題と似ており、待機していた医師らが傷ついた自尊心の回復や、激化しそうな不和の解消に努めたという。

 ミッションを完遂したクルー6人には、各300万ルーブル(約760万円)の報酬と、世界中から届いた祝福メッセージが渡された。(c)AFP