【10月24日 AFP】米アップル(Apple)の共同創業者、故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏は完璧主義者で、従業員たちに厳しくあたり、いら立ち、痛烈に否定的な態度を示すこともあった―24日に発売されるジョブズ氏の伝記の著者はこう語る。

  「彼は心温まるような人物ではなかった。とても短気だった。とても冷淡で、ときに他人に対してとても意地悪になれた」。ジョブス氏の伝記を執筆したウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)氏は、米CBSテレビの情報番組「60ミニッツ(60 Minutes)」のインタビューでこう語った。

■人にも厳しく求めた完璧主義

 アイザックソン氏いわく「彼は、レストランのウエートレスに対しても、プログラミングのために一晩中起きていた人に対しても、近づいていって『全部間違ってるぞ。ひどいもんだ』と言える人間なんだ。それで相手が『なんでそんなこと言うんだ?もっと優しくなれないのか?』と言えば、彼はこう返す。『私は完璧を求める人間とだけ一緒にいたいんだ。それが私だ』」

 ジョブズ氏の完璧主義は、養父のポール・ジョブズ(Paul Jobs)氏譲りだったという。「ある日、彼らは塀をつくっていた。そこで養父はこう言った。『目に見えない塀の裏側も、塀の表側と同じくらい、見栄え良く作るようにしなさい。完璧なものを作りだそうと専念していることが、それで分かる』」

 アイザックソン氏は、「(ジョブズ氏は)世界最高の経営者ではなかった」と語る。「実際、彼は世界最低の経営者だったかもしれない」

   「彼はいつも物事をひっくり返していた。それに物事を混乱に陥れていた。最高の製品を作ったかもしれないが、最高の経営スタイルを生み出したとは言えない」

■「みんな金で変わった」

 ジョブズ氏は億万長者になった後も、米カリフォルニア(California)州パロアルト(Palo Alto)の質素な家に住み続けた。金で人生を変えられてはならないと決意していたのだ。

 ジョブズ氏は、アイザックソン氏の録音インタビューに対し、アップルでは多くの人が裕福になってから変わったと語った。

   「(高級車の)ロールスロイス(Rolls-Royce)を買った者もいれば、住宅を買った者もいる。妻たちは美容整形を受けるようになった。とても素朴でいい人たちが、変人に変わっていくのを見てきた。それで私は自分に誓った。『金で人生を台無しにされたりなんかしないぞ』と」(スティーブ・ジョブズ氏)

 2003年にすい臓がんを患ってから、ジョブズ氏は外出しようとせず、国外旅行にも行きたいと言わなくなった。「彼は、製品の開発にだけ注力したんだ」とアイザックソン氏は語った。(c)AFP