【9月28日 AFP】チェコの首都プラハ(Prague)のアートギャラリーで27日開幕したチェコ人アーティスト、ロマン・ティーク(Roman Tyc)氏(37)の個展が、来場者をぎょっとさせている。絵画に遺灰が使用されているためだ。

 個展のタイトルは「墓泥棒」。紹介文でティーク氏は次のように書いている。「あなたが6歳の時、母親が亡くなったとしよう。あなたは母親を骨つぼとして見るようになる。死ぬまで写真の中の母親しか知らないことになる。あなたは思うはずだ、彼女を骨つぼから解放する手立てがあるはずだと」

 アートギャラリー「ドボルザーク・セク・コンテンポラリー(Dvorak Sec Contemporary)」のエドムンド・ツッカ(Edmund Cucka)氏は展覧会初日、AFP記者に対し、「彼の個人的な経験から来ています。彼は6歳の時に母親を失くし、母親の死に向き合おうと努めてきたのです」と説明を添えた。

 展示された19枚の肖像画は、黒い背景に灰白色の遺灰を乗せて、顔をシルエットのように浮かび上がらせている。「汚れのない作品です。ショッキングな要素は全くありません」とツッカ氏。遺灰の入手元については明らかにせず、「1960年代、チェコのアーティストたちは遺灰を絵の材料として用いていたんです」と付け加えた。

 なお、肖像画のモデルは俳優などの有名人ではなく、ティーク氏がその人生に魅せられて選んだ一般の人びとだという。

「火葬場で余った遺灰はゴミ捨て場に捨てられている」と語っていたティーク氏本人は、個展のオープニングには姿を見せなかった。絵は販売はされない。ギャラリー側はティーク氏に対し、個展終了後には遺灰を十分な尊厳をもってしかるべき場所にまくよう要請したという。

 ティーク氏は何かと物議を醸しているアーティスト集団「Ztohoven」のメンバーでもある。このグループは2007年、公営のテレビ番組をハッキングして、田園風景の映像に核爆弾によるキノコ雲の映像を重ね合わせて放送し、その名が知られるようになった。

 ティーク氏は同年、プラハ市内の歩行者用信号50基の「進め」と「止まれ」のシンボルを、ジャンプや立ち小便をしている少年のシンボルに置き替える細工を施し、オーストリア・ウィーン(Vienna)のアートフェスティバルで大賞を受賞したと同時に、1か月の刑務所暮らしも余議なくされた。(c)AFP