【9月5日 AFP】9.11米同時多発テロを子どもに教育することを目的とした米国の塗り絵「We Shall Never Forget 9/11(わたしたちは9.11を決して忘れない)」が、イスラム教徒の描写や、事件の解釈を巡って議論を起こしている。

 イスラム教徒の権利擁護団体「米イスラム関係評議会(Council on American Islamic RelationsCAIR)」ミシガン(Michigan)支部のダウード・ワリド(Dawud Walid)氏は、「最低だ」と同書について語る。

 この塗り絵では、イスラム教徒やイスラム教が描写されたり文章に登場するときは必ず、「テロリスト」または「過激派」という単語がセットになっている。一方、同時多発テロで死んだイスラム教徒や、事件後すぐに生存者の救助にあたったイスラム教徒の人びとのことなど、バランスを取るような図像や説明はない。それだけでなく、米国や世界中のイスラム教徒の大多数がテロリズムを非難していることについても、同書は触れていない。

 書籍の副題は「自由についての子どものための本」。「自由を憎むイスラム原理主義過激派」が、「わたしたちの『自由』なアメリカ流生き方を憎んだ」から米国を攻撃したと、子どもたちに教えている。

 ワリド氏は、AFPの取材に「イスラム教徒と会ったことがない子どもが、これを読んでイスラム教への恐怖以外の何かを学ぶと思っている人たちは、おかしいとしか言えない」と述べる。

 塗り絵を出版した出版社のウェイン・ベル(Wayne Bell)氏は、この本は「3000人を殺害した19人の悪のテロリストたち」についての真実の話だと主張する。「あの航空機を操縦してビルに突っ込んだ連中が、たまたま過激なイスラム聖戦士だっただけだ」

 ちなみに同書に対する批判は、良い影響も及ぼした。各紙のヘッドラインを飾ったことで、書籍の売り上げが急増したという。(c)AFP/Mira Oberman

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