【5月27日 AFP】ナイジェリアでは29日にグッドラック・ジョナサン(Goodluck Jonathan)大統領(53)の就任式が行われ、4月の大統領選挙後の混乱と政治の空白にようやく終止符が打たれるが、これを期に、あまり知られていない同国の文化的側面にも注目が集まるかもしれない。

 それは、英語由来であれ現地語由来であれ、ナイジェリア人の名前には何がしかの「物語」が秘められているということだ。それぞれの名前に意味があり、子どもはやがて名付けた通りの人物に育つと信じられているのだ。

 赤ちゃんの命名式は、多くの地域で盛大に祝われる。そこでは山ほどの食事や飲み物と一緒に、「ゴッズウィル(神の意志)」「ゴッズパワー(神の力)」「ゴッズギフト(神の贈り物)」といった宗教的なものから「ブラウン・クエスチョン(茶色い質問)」などの風変わりなものまで、さまざまな名前がお披露目される。

■「幸運」の名を体現する大統領

「グッドラック(幸運)」の名を持つジョナサン大統領も、名前を「地で行っている」1人だ。カヌー大工だった大統領の父親は生前、「あの子が産まれたとき、生活は苦しかったが、この子がわたしに幸運をもたらしてくれると感じたので、グッドラックと名付けたんだ」と説明していた。また、母親は、難産をたくさん経験してきたのに大統領のときだけはするりと産まれてきたというエピソードを語ったことがある。

 しかも、動物学者から政治家に転向した大統領は実際、「他に適任者がいないから」という理由で政治の階段を一段ずつ昇ってきた。

 2005年、故郷の南部バイエルサ(Bayelsa)州で副知事を務めていた際、知事が資金洗浄罪で弾劾されたため、後任知事に昇格。その数年後の大統領選では、南北の権力バランスを考慮した北部出身のウマル・ムサ・ヤラドゥア(Umaru Musa Yar'Adua)大統領候補から、南部出の副大統領候補として白羽の矢が立った。内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」が公開した米外交公文によれば当時、ジョナサン氏自身、自分が副大統領にふさわしい経験を有しているとは言い難いと発言していた。

 この選挙で当選したヤラドゥア大統領が2010年に死去すると、規定によりジョナサン氏は大統領に就任。そして今年4月に行われた大統領選で、ジョナサン氏は現職の強みで圧勝したのだ。

■「道の途中」や曜日など、さまざまな命名の作法

 子どもの名前には、生まれた状況、文化や宗教観、親の期待、そして哲学が反映されている。

 面白い名付けの例としては、現地語で「うるさい場所」というのがある。騒々しい環境で生まれたのだろう。「道の途中」という名前の子は、おそらく産院に駆け付ける途中で産まれたに違いない。家族間の確執が激しい両親の間に生まれた子どもには、「家族に愛されない」という名前が付けられることも。
 
 英語バージョンも豊富だ。「ブラウン・クエスチョン」という名前の政府役人の名付け親は、土地所有権をめぐる仲裁役を務めていた祖父だった。質問することが仲裁役の仕事の基本だったからだ。クエスチョンさんは、名前のことでからかわれたことが何度かあるという。

 イスラム教徒が多い北部では、名前の大半がコーランの字句に由来している。だが、姓が故郷の街の名前である場合もある。シェフ・シャガリ(Shehu Shagari)元大統領は、シャガリ町の出身だ。

 南東部のイボ(Igbo)人、そして南西部のヨルバ(Yoruba)人のコミュニティーでは、しばしば、生まれた日の「曜日」が名前となる。

 したがって、あなたがナイジェリアを訪れたら、こんなことが起きるかもしれない。土曜日の夜に、サンデーさんとマンデーさんと連れ立って、グサウ出身のグサウ氏の元へ遊びに行く。そこで、もしグッドラックさんとゴッズウィルさんに出会うことができたら、こっちのものだ。(c)AFP/Susan Njanji