【5月23日 AFP】地震リスクをめぐる研究がプレート境界型地震に偏っているとして、内陸部で発生する直下型地震に関する研究をもっと行うべきだと、英国の科学者2人が22日の英科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)」で呼びかけた。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)のフィリップ・イングランド(Philip England)教授と、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のジェームズ・ジャクソン(James Jackson)教授は、3月11日に発生したプレート境界型の東北地方太平洋沖地震において、被災規模に対して死亡率が被災者全体の0.4%と「驚くほど低かった」うえ、死者の多くは津波によるもので地震そのものが原因ではなかった点を指摘。理由として、日頃の防災訓練の成果や、耐震性の高い建物を挙げ、プレート境界型地震について研究が比較的進んでいることを示した。

 その一方で、プレート境界型地震よりも大きな地震リスクが内陸直下型地震には潜んでいると主張し、「内陸直下型地震による死亡率はしばしば5%を超え、最悪の場合は30%にも上る」と警鐘を鳴らしている。

■研究の遅れが死者の増加に

 両教授によると、過去120年間に世界各地で起きた地震のうち、死者が1000人を超えた地震はおよそ130件に上るが、内陸直下型地震が約100件を占めているという。死者数でも、プレート境界型地震による累計犠牲者数は80万人で、その半数は津波が原因なのに対し、内陸直下型地震による死者は140万人だったという。

 内陸直下型地震の例としては、2003年にイランのバム(Bam)で発生した3万人が犠牲となった地震がある。また、05年にはパキスタンのムザファラバード(Muzzafarabad)で犠牲者7万5000人を出す地震が発生。08年の中国南西部を襲った四川大地震では7万人が死亡した。

 両教授は、内陸直下型地震で犠牲者が多くなる主な原因として、地震帯の分布解析が遅れていることを挙げている。内陸部の活断層は非常に複雑なことが多く、運動速度も遅いため、地震が発生するまでに数百年、数千年かけてひずみを溜め込むこともある。

 両教授は、プレート境界断層と同レベルの研究が内陸断層についても行われるべきだと提唱。「毎年数百万人が(地震に対して)ぜい弱な地域にある大都市に移住している昨今、内陸直下型地震の脅威はますます高まっている。これらの大都市の多くは、かつて人口が今よりもずっと少なかったころに、少なくとも一度は地震で被災しているのだ」と述べ、まずは、イタリアからギリシャ、トルコ、中東を通りイラン、中央アジアを経て中国まで1000万平方キロメートルにわたって続くアルプス・ヒマラヤ造山帯について調査を行おうと呼びかけている。(c)AFP

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