【1月26日 AFP】中国や東南アジアで新年を祝う旧正月まであとわずか。ことしのえとがウサギであることから、動物保護団体は一時的なウサギ人気が捨てウサギの増加につながるのではないかと懸念している。

 インターネットでペット用のウサギを販売するタイの小売業者は、旧正月が近づくにつれ売り上げは倍増したと語る。購入者の多くは10代の若者や大学生などで、恋人などへのプレゼントとして購入しているようだ。

 中国でもペット業者が「手ごろな価格で家庭用ペットに最適」などと宣伝に力を入れた結果、ウサギの売り上げが伸びている。1匹の価格は種によって異なるが3ドル(約250円)から39.5ドル(約3200円)程度だ。

 青島(Qingdao)のあるペット業者は「ことし1月1日からこれまでの売り上げは、すでに去年1年分の売り上げを超えた」と話す。「見た目も可愛いし、世話も楽だからね」

■捨てウサギ増加に警鐘

 動物愛護団体はこのような理解は誤っていると強調する。

 国際動物愛護団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)のマギー・チェン(Maggie Chen)氏は「多くの動物を苦しめる動物の売買を拒否すればウサギを助けられる。ウサギは可愛いが飼育には手間がかかる。お金もかかるし、専用用具や獣医によるケアも必要だ」と力説する。

「多くの人が生き物を飼う責任の重さを理解しないまま、衝動的にペットを買ってしまう」と、シンガポールのウサギ愛好団体「シンガポール・イエウサギ協会(House Rabbit Society Singapore)」のジャスリン・ヘン(Jacelyn Heng)会長は懸念する。「特にウサギは、『手がかからないから子どもが初めて飼うペットにちょうどいい』という誤解が甚だしい」

 ヘン会長によると、シンガポールのペットショップの多くはウサギの正しい飼育知識を持っておらず、初めてウサギを飼う顧客に誤った知識を教えているという。

 タイ・バンコク(Bangkok)のチュラロンコン大学(Chulalongkorn University)のトンサポーン・アナンタクルナティー(Thosaporn Anuntakulnatee)教授(獣医学)も同じ考えだ。「ウサギを買ったものの世話の仕方が分からず、野山や寺院に捨てる人もいる」。同教授によると、ウサギは成長が速く、繁殖力も強い。外来種のウサギでは特にこの傾向が強いという。

 国際動物虐待防止協会(Society for the Prevention of Cruelty to AnimalsSPCA)のシンガポール支部が前回卯年だった1999年に引き取った捨てウサギは、前年比116%増の625匹に上った。ことしのウサギの運命を予測するにはまだ早いが、12年前と同じ事態が起きないという保証はない。

 国際動物虐待防止協会とシンガポール・イエウサギ協会は共同で、衝動的にウサギを購入しないよう国民に呼びかけていくという。

■中華料理の食材にも

 新年シーズンにウサギが直面する脅威はこれだけではない。2月3日から17日まで続くことしの春節(旧正月)シーズンに、ウサギ料理をメニューに加える予定の中国料理店もある。

 シンガポールの中国料理店「四川閣(Szechuan Court)」もそうした店の1つだ。同店のシェフ、セバスティアン・ゴー(Sebastian Goh)氏は、あわびやホタテも入った四川風ウサギ肉の煮込み料理を考案した。「中華料理でウサギ肉を使うことはまれですが、ウサギ年の新年を祝う縁起物として取り入れてみました」(ゴー氏)。

(c)AFP/Bernice Han