【7月27日 AFP】中曽根康弘(Yasuhiro Nakasone)元首相(92)がAFPのインタビューに対し、日本が真の2大政党制を実現するまでにはまだ数年かかると語った。

 日本では「政党政治というものがまだ、必ずしも成熟しきっていない」――1980年代に5年に及ぶ長期政権を率い、保守政治家の中でもタカ派として知られる元首相はこう口にした。ひとつは「強力なリーダーシップをもつ政治家が生まれていない」からだという指摘だ。

■真の2大政党政治までには時間がかかる

 日本は過去4年の間に5人の首相が交替するという「回転ドア内閣」が続いた。国際社会における日本の存在感が弱まっただけでなく、財政赤字や経済の停滞といった山積する問題を解決する糸口も見えない。

 前年には自民党(Liberal Democratic PartyLDP)から民主党(Democratic Party of JapanDPJ)への政権交替劇が起こったが、中曽根元首相は、政治のダイナミズムを培うためには、米国や英国のように数年ごとに政権が入れ替わるシステムを目指して歩み続けなければならないと言う。しかし昨今の小政党の増加によって、政治はいっそう複雑になるとみて、2大政党制は「定着するまでに、時間が相当かかる」とも予測する。

 現在の菅直人(Naoto Kan)首相については、6月に同党幹事長を辞任した後も依然として党内の実力者である小沢一郎(Ichiro Ozawa)氏との「協力関係」を築かなければならないと指摘し、党内の権力闘争によって菅首相の力は限られていると中曽根氏は分析する。

 近年のめまぐるしい首相交替について中曽根氏は、政治指導者たちを追いかけては際限なく「失態」を取り上げる日本のメディアにも問題があると言う。「英米のメディアに比べると、日本のメディアは過度のポピュリズム、そういうものに多少毒されている要素がある。もっと合理的な、国民が納得するような報道振りや批判力に改善されていくと思うが、まだそうなってない」

■外交:中国問題をそう心配する必要はない

 外交で日米同盟の必要性を強調する中曽根氏は在任中、当時のロナルド・レーガン(Ronald Reagan)大統領と個人的に親しい関係も築いた。戦後日本の繁栄はその一端を、安全保障と抑止力を米国に依存してきたためだとも語る。

 米国とのより「対等な」パートナーシップを掲げた鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)前首相については、「日本が独自の軍備をもって自国防衛をまっとうするという、そういう状況ではない」と述べて批判した。

 また中国については、第2の経済大国の座を明け渡しても、日本は心配過剰になる必要はないというのが中曽根氏の主張だ。

「GDPにおいては国の大きさ、人口の多さという点において、中国が日本を追い越していくというのは当然のことだ。中国にはまだ非常に大きな問題点がある」。さらに中国の共産主義体制と現在の資本主義的傾向の間の矛盾を指摘して、中国は「ある意味においては、国家的弱さをもっている。だから、中国問題をそう心配する必要はない」

 中曽根氏は東大法学部を卒業後、第2次大戦中で海軍に従軍した。改憲論者で、1982~87年までの5年間、首相を務めた際には現職首相として靖国神社に公式参拝し、アジアとの関係を悪化させもした。また在任期間中に、日本専売公社や国鉄、電電公社などの民営化を進め、円高を促進した。 2003年に議員を引退したが、その後も民主党の菅現首相含め、首相らに助言を与えるなど影響力を維持している。(c)AFP/Shingo Ito