【7月15日 AFP】(一部更新)2009年に行方不明になり、米国のパキスタン大使館に14日保護されたイラン人核科学者シャハラム・アミリ(Shahram Amiri)氏が15日未明(日本時間同日午前)、イランに到着した。直後に行った記者会見でアミリ氏は、自分は「核科学者ではない」と話すとともに、拘束中に「イスラエル人にも尋問された」と語った。

 アミリ氏は、テヘラン(Tehran)のイマム・ホメイニ(Imam Khomeini)国際空港に降り立った直後に記者団に対し、「私はただの研究者だ」「(ウラン濃縮が行われている)ナタンツ(Natanz)やフォルド(Fordo)の核施設とは何のかかわりもない」と語った。

「米政府が(イランに)政治的圧力をかけるための道具にされた。原子力についての研究は何もしていない。大学で誰にでも開かれた研究をしていた研究者で、そこには何の秘密もない」

■イスラエルも尋問に関与

 また、2009年6月にサウジアラビアに巡礼に出かけた際に行方がわからなくなってからについて、拘束されて最初の2か月間は「最も厳しい精神的・肉体的拷問」を受けたと説明。尋問には、「イスラエルの尋問官が同席していることが何回かあった。私をイスラエルに連れて行こうとしていたのはあきらかだ」と訴えた。

 イスラエルはイランの核開発プログラムを阻止するためならテヘランへの攻撃も辞さないと主張している。

 アミリ氏の身元や行方不明になった経緯については、さまざまな情報が飛び交っている。空港で同氏を出迎えたイランのハサン・ガシュガビ(Hassan Ghashghavi)外務副大臣は、核科学者ではないとの同氏の主張に同調したが、イラン当局は先に、アミリ氏は核科学者だと発表していた。

■CIAが500万ドル支払った?

 またイラン当局はアミリ氏が米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)に拉致されたと主張しているが、米メディアは同氏が米国に亡命したと報じている。米当局はどちらも否定している。

 一方、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は15日、アミリ氏がイランの核開発情報と引き替えに、CIAから500万ドル(約4億4000万円)を受け取っていたと伝えた。

 米政府関係者によるとアミリ氏はCIAと綿密な連携を取っていたにも関わらず、突然イランに帰国したという。同紙は、「アミリ氏は受け取った金を返す義務はないが、CIAとの関係を突然解消した以上、今後その金に手をつけるのは難しいだろう」と報じている。

 匿名の情報筋は、アミリ氏は、家族がイラン政府に罰せられるのを恐れて帰国を決意したのではないかと語っている。

 しかしアミリ氏は、帰国の考えを変えて米国にとどまれば5000万ドル(約44億円)を支払うと米当局者に言われたと語った。米当局の手でアミリ氏の家族をイランから米国に連れてくるとも言われたという。しかしアミリ氏は拘束中に、家族に危害を加えると脅されていたという。(c)AFP/Hiedeh Farmani and Jay Deshmukh