【7月7日 AFP】山の頂上で歓声をあげる学生や記念写真を撮る人びと。登山が盛んな韓国ではよくみられる光景だ。都会の騒がしさを逃れて、多くの人びとが登山や山歩きを楽しむ。

 こうしたなか、京畿道(Gyeonggi-do)は5月、韓国と北朝鮮を隔てるDMZ(非武装地帯)の近くに全長182キロのトレッキングコースを整備し、ハイカーに解放した。

 DMZは朝鮮半島を分断する軍事境界線の南北2キロの範囲に設定された、半島東岸から西岸におよぶ地域。1953年に朝鮮戦争が休戦して以来、60年にわたって、民間人の立入りは厳しく制限されてきたため、DMZ一帯では豊かな自然が維持されている。

 トレッキングコースの開設以来、これまでに1万人がコースを歩き、美しい自然を満喫しながら、DMZ内の文化遺跡や戦争の遺物にも触れた。

■最長21キロの12コース

 トレッキングコースは、8キロから最長21キロまで12のコースに別れ、景観を守るため標識類は最小限にとどめ、道しるべとして木々に青やオレンジ色のリボンが結ばれている。

 京畿道は、隣接する自治体などの協力を得て、トレッキングコースをさらに拡大する計画だ。

「非武装地帯を歩きながら、ハイカーたちが朝鮮半島の緊張という現実や南北統一を考える機会になれば」と、トレッキングコース・プロジェクトを担当した京畿道庁のハン・ペジュ氏は話す。

 文殊(Munsu)山城から愛妓峰(Aegibong)をつなぐコースなどでは、北朝鮮を臨むことができる場所もある。北朝鮮を直に目にすることができる場所について、京畿道はウェブサイトで「喜びと同時に(朝鮮半島分断の)悲しみを感じる場所」と説明している。

■戦争で荒れた土地をよみがえらせた自然の力

 点在する村々を通り抜けたあと、コースは野原にでる。DMZの南北を仕切る鉄柵。看板には「民間人および住民の立入禁止」の文字。鉄柵の北側には、かすかに北朝鮮の風景が見える。木の葉でカモフラージュされているのはコンクリートの塹壕だ。

 そして、軍事境界線近くの山地でコースは終わる。この先に道はなく、咲き乱れる花々や野草が広がる。戦争で荒れた土地をよみがえらせた自然の力をハイカーは目にすることになると、ハン氏は語った。
 
 一方、この地の農民たちは、ヘルメット姿の兵士が警備につくなかでも、淡々と畑を耕す。「ここは安全だし、山に薬草を摘みにいくこともある」というある農民の男性は、「今まで人を見かけることはなかったが、最近になって人が増えてきた」と話す。静かなこの土地に暮らす住民たちは、新しい訪問者、ハイカーたちを歓迎している。(c)AFP/Nam You-Sun