【4月13日 AFP】市場の目下の関心は、巨大な財政赤字を抱えたギリシャに集まっている。だが、その陰で、先進国で最大の債務残高を抱える日本財政も危ない綱渡りを続けている状態だと、アナリストらは警告している。

 景気低迷に伴い税収が落ち込む一方で、高齢化社会に伴う社会保障コストは増大を続け、2011年度の日本の借金は国内総生産(GDP)の200%に達する可能性もある。

 こうした状況について、第一生命経済研究所(Dai-ichi Life Research Institute)の主席エコノミスト、熊野英生(Hideo Kumano)氏は、「大雑把に言って、今年度の日本の税収は37兆円、国債発行額は44兆円。つまり、借金の予算に対する比率は50パーセント以上ということだ」と説明。さらに、「もし国債を一切発行しなければ、日本は来年度には破産するといえる」と踏み込んだ。

 前年に発足した鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)首相も負債削減努力を続けてはいるが、米格付け機関スタンダード&プアーズ(Standard and Poor's)は今年1月、日本の国債格付け格下げの可能性を示唆している。

 バブル経済がはじけた1990年以降、日本ではゆうちょ銀行(Japan Post Bank、旧郵政公社)などの金融機関が国債の受け皿となり、財政を支えてきた。

 ギリシャに比べて日本が債務不履行(デフォルト)を出すリスクが低い理由の1つとして、三菱UFJ証券(Mitsubishi UFJ Securities)の債権ストラテジスト、稲留克俊(Katsutoshi Inadome)氏も「莫大(ばくだい)な経常黒字を抱えている――つまり、民間部門の蓄えがあることだ」と指摘する。

 だが、ギリシャ型債権危機のリスクはほとんどないにしても、政府が国債発行への依存を続ければ、財政破たんが現実となるとみるアナリストは少なくない。

 熊野氏は「(国際市場で)金の流れがある限り問題はない」としながらも、「いつ危機が訪れるかというのは難しい問題。しかし、日本にはもう借金を支払う能力がないと市場が判断したときが、そのとき」だと語った。その場合、熊野氏は、円の暴落と国債市場から外債への資金流出が同時に起こる可能性があると予測する。

 一方で、GDP比200%の借金をそれほど危惧(きぐ)する必要はないとの見方もある。

 野村證券(Nomura Securities)のエコノミスト、木内登英(Takehide Kiuchi)氏は、戦後の財政赤字が260%に達したことがある英国を例に、「どのレベルが国が破たんする危険水準であるかという答えはない」と話す。さらに、ユーロ圏のギリシャと、国の財政状況を為替に反映できる変動為替相場制度を持つ国とでは条件が違うと指摘。日本の巨額債務がもたらす最も現実的な危険は、停滞する経済下でのデフレの長期化だという。

「財政再建には緊縮財政が必要だが、それが経済成長を阻む恐れもある。景気が悪いと人は将来に不安を覚え、お金を使いたがらない。これがデフレの傾向を強めてしまう」(木内氏)

 長引くデフレは、税収の減少や景気対策コストの拡大、増税懸念などで日本の財政状況をさらに悪化させ、こうした状況が需要を抑制し、さらにデフレが進む。こうした悪循環から脱出する鍵となるのが、実効的な経済成長戦略だとアナリストらは指摘する。

「経済が成長すれば、税収が増える」(熊野氏)

(c)AFP/Kyoko Hasegawa