【12月21日 AFP】航空各社は、約10年前から続く財政難を、航空運賃の低価格化のほか、シームレスでペーパーレス、さらにコンタクトレス(チェックインカウンターを必要としない)な搭乗を約束することで、乗り切ろうとしている。

 KLMオランダ航空(KLM Royal Dutch Airlines)は、自動荷物預け入れ機の試用を開始。また、航空会社230社が加盟する国際航空運送協会(International Air Transport AssociationIATA)は、携帯電話とパスポート/IDカードで搭乗が可能な「モバイル搭乗券」の導入を推進している。

■経営不振脱却には発券・搭乗手続きの簡素化?

 世界経済が回復を見せる中、来年の乗客数はピーク時の2007年に迫る23億人あまりと推定されている。その一方で、大手航空各社の収益は2年前を大きく下回り、損失が膨らむことが予想される。

 だが、IATA加盟各社にとって、航空運賃を上げることは選択肢にはない。(格安航空会社のライアンエア(Ryanair)とイージージェット航空(Easyjet Airlines)はIATAには非加盟)

 その代わり、発券・搭乗手続きを「簡素化」することで航空各社は170億ドル(約1兆5000億円)程度を節約できると、IATAは見ている。

 国際空港評議会(Airports Council InternationalACI)によると、世界の主な空港は、手続きの自動化に向けた努力を行っているが、航空会社が路線をちょくちょく変更することもあり、困難な作業となっている。

 ACIの広報担当者は、「消費者はできるだけ低価格のチケットと最も迅速な手続きを望んでいる。手続きの自動化と合理化がその両方を満たしてくれると信じている」と話したうえで、「スマートフォン搭乗券」が一般的になっていくだろうと予想した。  

■さまざまな課題

 セルフ・チェックイン機が導入されているのは世界139空港にのぼるが、荷物の自動預け入れを容認しているのはIATA加盟会社の中では22社しかない。そうした荷物の処理における「正確さ」が、航空会社・空港双方にとっての課題だ。 

 ACIは、現在空港でコスト高の「グループごとのシステム」を採用している航空各社に対し、システムの一本化を容認するよう説得を続けてもいる。航空会社にとっては、マイレージ・サービスなど、社外秘のデータを多く抱えているために共有したくないといった事情がある。

 航空各社にとってもう1つの悩みの種は、2001年の9.11同時多発テロ以降さらに重要視されるようになった、セキュリティーの問題だ。セキュリティーの強化に費やされたお金は総額で59億ドル(約5300億円)にものぼっているという。(c)AFP/Peter Capella