【7月30日 AFP】米保守派の少数の非主流派が、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の大統領資格に異議を申し立てている。彼らの多くは、基本的にアフリカ系米国人が大統領になるという考えに反対する者たちだ。

■右派や人種差別主義者の巣窟「バーサーズ」

 彼らは「バーサーズ(Birthers)」と名乗るグループで、インターネット上のブログから果ては裁判所でまで、「米国生まれの合衆国市民でなければ、大統領となることはできない」と規定している合衆国憲法を引き合いに出して、オバマ大統領がホワイトハウスにいる資格はないと糾弾している。

 オバマ氏の出生に関わるうわさは、米ハワイ(Hawai)州生まれだとの事実を示す出生証明書などの証拠があるにもかかわらず、広がり続けている。煽っているのは、右派の過激派や人種差別主義者(レイシスト)、ホロコースト否定論者などが集まるグループだ。

 過激派を研究する南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center)のマーク・ポトック(Mark Potok)氏は、「彼らは基本的にレイシストか極右の集まり。ここから今回の運動全体が起こっている」と分析する。同氏によると、運動を率いている人びとの構成は「オバマ氏に大統領であってほしくないと強く考える者たち」で、その理由は「主にオバマ氏が黒人だから、また確実に彼がリベラルだから」だという。

■「オバマ氏はケニア生まれ」の証明に躍起

 独立系インターネット新聞「ワールドネットデイリー(WorldNetDaily)」は、オバマ氏の出生地に疑義を申し立てる署名に40万を超える電子「署名」を集めた。こうしたサイト上で「バーサーズ」は日々、「オバマ出生のストーリーに関する新たな疑惑」を持ち出している。

「バーサーズ」の1人はこれまでに3回、インターネットオークション大手イーベイ(eBay)にオバマ氏がケニアで生まれたとする「出生証明書」を出品しようとしたが、失敗した。また、バーサーズはすでに数か所で、オバマ氏は米国内の生まれではないと主張する裁判を起こし、却下されている。中には最高裁への提訴もあったが、最高裁は聞く耳を持たなかった。

■政府や議会は「ハワイ生まれ」を再三保証

 オバマ氏の本名はバラク・フセイン・オバマ(Barack Hussein Obama)、1961年8月4日ハワイ時間午後7時24分、ホノルル(Honolulu)のカピオラニ(Kapiolani)にある産婦人科専門病院で誕生――今週初め、ハワイ州当局はオバマ大統領がハワイ生まれだとの出生証明を余儀なくされた。大統領就任からすでに2回目だ。

 一方、米下院は27日、ハワイの州への昇格50周年の機に、「第44代アメリカ合衆国大統領はハワイで生まれた」ことを確認する法的拘束力のない決議を採択した。

■反体制勢力の闇の伝統、陰謀説も影響

「米国には陰謀説の歴史がある。反体制の伝統の一部ともいえる」と、シンクタンク「ポリティカル・リサーチ・アソシエイツ(Political Research Associates)」の米右派運動の専門家、チップ・バーレット(Chip Berlet)氏は指摘する。

 バーレット氏によれば米国には、全国民人口に比べればわずかながら、米国政府はフリーメーソンやカトリック教会、ユダヤ人銀行家などの「秘密のエリート集団」に乗っ取られてきたと信じる人びとがいる。ビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領もこの陰謀説の標的にされ、米国内のすべての武器を押収するために国連の助けを求めていると糾弾されたことがあるという。(c)AFP/Virginie Montet

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