【1月22日 AFP】チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の19世紀の小説「オリバー・ツイスト(Oliver Twist)」で、孤児オリバーが食べていたおかゆが13日、金融危機の渦中にある英国で再現された。

 英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)は、1838年刊行の著作と歴史的な資料を基に、ビクトリア期の貧民たちが食べていたこのおかゆをオーツ麦、ミルク、水を使って忠実に再現。ロンドン(London)の通行人たちに試食してもらった。すると、「とてもおいしい」との感想が少なからず寄せられた。

「ポリッジみたいだけど、あっさりしている。すごくおいしい」と、モスクワ(Moscow)出身の会社員イリナさん(30)。オリバーは週に2回、「ごちそう」と称しておかゆにタマネギを入れてすすっていたが、イリナさんは「タマネギ・バージョン」の方が好きだと答えた。「タマネギを加えると味に深みが増すわね」

 ニューヨーク(New York)から来たシャロンさんにとっては、「もっとどろどろして、味がないかと思っていたけど、おいしい」と新鮮な驚きだったようだ。イタリア在住のアンナさん(39)にいたっては、「毎日でも食べれると思うわ。朝食にとってもいいわ。ぜいたくな食生活にバイバイした人には、おすすめね」と、べたぼれだ。

 おかゆを再現したフランスのシェフ、ファビアン・アイド(Fabian Aid)氏によると、材料は水とミルクが半々で、当時のように味付けはしていない。「何も食べないよりはましだろう」

 だが、栄養士のLeanne Fishwick氏は、「オリバーのようにおかゆを1日3パイントしか食べない生活を続けていたら、鉄欠乏症、壊血病、リケッチア症、チアミン欠乏症、脚気などになって死んでしまうだろう。カロリーも極めて低い」と語る。「救貧院に入れられた孤児たちは、重労働を強いられていたこともあり、どんどん栄養不良になっていったのでは」

 英国王立化学会は今週、農業、流通、販売、廃棄処分など食料に関するあらゆる側面を取り扱かう報告書「The vital ingredient: Chemical science and engineering for sustainable food」(不可欠な材料:持続可能な食料のための化学と工学)を公開した。王立化学会の広報担当者は「化学は退屈だと思われがちですが、食品の安全のためには非常に重要なのです」と述べた。(c)AFP/Robin Millard

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