【12月26日 AFP】2008年は、ウェブが政治を永遠に変えた年として記憶に残るかもしれない。

 その最たるものがバラク・オバマ(Barack Obama)氏の選挙活動だと、民主党顧問のジョー・トリッピ(Joe Trippi)氏は言う。トリッピ氏は2004年の大統領選挙で民主党のハワード・ディーン(Howard Dean)候補の選挙対策責任者を務め、資金集めや票集めにインターネットを活用した草分け的存在だ。

 同氏は、前月サンフランシスコ(San Francisco)で開かれた「Web 2.0 サミット(Web 2.0 Summit)」で、オバマ氏のニューメディアチームによるネットの活用を次のように表現した。「2004年をライト兄弟の初飛行に例えるとすると、(2008年の大統領選挙で)アポロ11号が誕生し、オバマがホワイトハウスに無事着陸した、とでも言えようか。さまざまなツールの登場により、この4年間で劇的に変化した。今年は画期的な年だ」

 民主党寄りのニュースとブログのサイト「ハッフィントン・ポスト(HuffingtonPost.com)」を創設したギリシャ出身のアリアナ・ハッフィントン(Arianna Huffington)氏も、この意見に同意する。同サミットでハッフィントン氏は、「インターネットがなかったらオバマは大統領にはならなかっただろう」と言い切った。

 政治専門ブログ「Techpresident.com」の共同創設者であるミカ・シフリー(Micah Sifry)氏は、オバマ氏の選挙活動は「大衆参加政治の時代」の先駆けになったと指摘する。

■選挙でのネット活用は海外にも波及

 派手なウェブサイト、Eメール、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」、「マイスペース(MySpace)」や「フェースブック(Facebook)」などのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、マイクロブログサービス「ツイッター(Twitter)」など、ありとあらゆるネットツールを活用して情報交換、資金集め、組織作りを行うというオバマ陣営の選挙スタイルは、すでに海外にも波及している。

 来年2月に総選挙が行われるイスラエルでは、右派リクード(Likud)を率いるベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)元首相が、ソーシャルネットワークの活用から、色・フォントに至るまで、大胆にもオバマ氏のウェブサイトをそっくりまねしたサイトを開設している。

■1台の携帯電話から

 トリッピ氏は、新技術が影響を及ぼすのは先進国の政界だけにとどまらないと指摘する。例えば、同氏が足を運んだナイジェリアでは、入手可能な最新鋭の機器といえば携帯電話だが、人びとはテキストメッセージを「回覧」して情報を得ている。どんなに貧しい村にも必ず1台は携帯電話があり、村人たちが共有しているという。

 オバマ氏のニューメディアチームは、これまでめったに表に顔を出すことはなかったが、今月ニューヨーク(New York)で開催されたWeb 2.0と政治の関係をテーマにした公開討論会に、チームのジョー・ロスパース(Joe Rospars)、スコット・グッドスタイン(Scott Goodstein)、サム・グラハムフェルセン(Sam Graham-Felsen)の3氏が登場した。すべては、3人がたった1台のスマートフォン、米アップル(Apple)の携帯電話端末iPhone(アイフォーン)を共有するところから始まったという。

「選挙運動の当初から、現場の作業、資金集め、情報伝達が、ニューメディアと緊密に連携していた」とロスパース氏。「単なる選挙運動ではなく、有権者を組織化しようとする大きな運動だった」とグラハムフェルセン氏。

■ネットは不可欠、しかし「変わらないものもある」

 米大統領選でウェブが提供したさまざまな機会は、これまで考えられなかった方法での組織化を可能にし、今後は米内外でインターネットが選挙運動における不可欠な構成要素になることを予見させている。

 だが、グッドスタイン氏は「今後も決して変わらないものもある」と強調。「選挙運動というものは、結局は時間、資源、資金の問題だ。民主主義で不可欠なのは組織化、つまり団結し、共通目標に向けて協調することだ」(グラハムフェルセン氏)(c)AFP/Chris Lefkow