【10月28日 AFP】投票日まで残り一週間を切り、いっそう加熱する米大統領選。このニュースを見聞きするロシアや旧ソ連圏の人びとが抱く疑問がある。「オバマって誰?」

 米露関係の観点から、共和党候補のジョン・マケイン(John McCain)上院議員が、ベトナム戦争への従軍経験を持つ対ロシア強硬派として知られることと比較すると、民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員の知名度は今ひとつのようだ。

■予測しやすいマケイン氏、オバマ氏は新たな挑戦

 しかし「オバマ氏が米大統領となった場合の米露関係は、予測はより難しいが、より面白い方向に向かうだろう」と、市民社会の促進に取り組むモスクワ(Moscow)のNGO、「ニュー・ユーラシア基金(New Eurasia Foundation)」のアンドレイ・コルツノフ(Andrei Kortunov)理事長はみる。

「ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は簡単だった。共和党政権は(ロシアについて)多くの間違いを犯していたので、ロシアの政治家にとって彼らとやり合うことは、そう難しくなかったが、オバマ氏との対峙は新たな挑戦となる」と、コルツノフ氏は語る。オバマ氏は「ブッシュ大統領の単独行動主義を批判し、海外における米国イメージの回復を誓う一方で、対ロシアではマケイン氏のロシア批判に同調しているからだ」

一方、「オバマ氏のコメントの多くはロシアに批判的だが、マケイン氏ほどではない」とみるのは、モスクワのアメリカ・カナダ研究所(The Institute for the USA and Canadian Studies)、バレリー・ガルブゾフ(Valery Garbuzov)副所長だ。

■グルジア、ウクライナとの同盟、次期米大統領の試金石

 南オセチア(South Ossetia)自治州をめぐる8月のロシアとグルジアの軍事衝突は、米露関係をも冷却化させ、第2の冷戦時代の再来が懸念される事態を招いた。

 こうしたなかで、米国の新大統領が試される外交手腕はまず、北大西洋条約機構(NATO)加盟を望むウクライナ、グルジア両国との強固な同盟の維持と、対ロシア外交とのバランスだろう。

 グルジアの首都トビリシ(Tbilisi)の行政研究機関「Georgian Institute for Public Affairs」のTornike Sharashenidze氏は、「グルジアにとって最良の候補は、強い米国をもたらす候補」と語る。

 8月にロシアがグルジアに侵攻した際、即時にロシアを批判する声明を出したのはマケイン氏だった。しかし、Sharashenidze氏は、金融危機を切り抜け、ブッシュ政権下で打ち砕かれた海外での米国の信頼を修復できさえすれば「長い目で見て、グルジアにとって好ましい大統領はオバマ氏だ」と語る。また、民主党の副大統領候補、ジョー・バイデン(Joe Biden)氏は、心強いグルジア支持者でもある。

 一方、ウクライナについては、マケイン、オバマ両氏とも同国のNATO加盟を支持するなど、両者の対ウクライナ戦略に大きな差はないとの見方が大勢だ。

「問題は戦略の違いではなく戦術の差、そしてそのトーンの差だ」と、ウクライナの首都キエフ(Kiev)にあるシンクタンク、ラズムコフ・センター(Razumkov Centre)のバレリー・シャリー(Valery Chaly)氏はいう。「その点では、協議姿勢がみられる分、ロシアにとってはオバマ氏の当選が望ましいだろう」

■対米強硬派ほどマケイン氏支持?

 ロシアの一般市民の見方はどうだろうか。モスクワの世論調査機関が27日に公表した調査結果によると、オバマ氏のほうが人気が高いようだ。

 米大統領選に注目しているロシア市民のうち、オバマ氏を好ましいと答えたのは35%で、マケイン氏の14%を上回った。残りは、どちらともいえないとの回答だった。 

 皮肉なことに、ロシアでのマケイン氏支持者は、対米強硬派に多いようだ。その理由について、コルツノフ理事長は「マケイン氏は彼らがイメージする通りの米国を体現しているから、対処しやすいと考えているのだろう」と分析している。(c)AFP