【10月4日 AFP】英科学誌『ニュー・サイエンティスト(New Scientist)』によると、怪獣映画やフィギュアでおなじみの翼を持つ恐竜・翼竜(プテロサウルス)が、実は飛べなかったとする仮説が登場し、古生物学者たちをあわてさせている。

 この説を発表したのは、東京大学の佐藤克文(Katsufumi Sato)氏。同氏はインド洋南部のクローゼ諸島(Crozet Islands)で、大型の海鳥の飛翔能力を試すというまれな研究を行った。

 飛ぶ鳥の中では世界最大といわれるワタリアホウドリを含む5種28羽の大型鳥の翼に、単3電池程度の大きさの加速度計を取り付け、飛ぶ速度を計測した。

 ワタリアホウドリは広げると3.5メートルにもなる翼の形を巧みに変え、風の波に乗って飛ぶ。風がない場合や風の速度が一定している場合は、羽ばたきをしないと重力と空気抵抗に負けて落ちてしまう。

 1か月に及んだ研究で、佐藤氏の付けた加速度計によって、海鳥の羽ばたきには2種類の早さがあるということが明らかになった。離陸するときには素早く羽ばたき、風がないときに空中を飛んでいる場合は遅かった。羽ばたきの早さは筋力によって制限され、翼の長く体重が重い鳥ほど早く羽ばたくことができないという結果が出た。

 佐藤氏は、体重40キロ以上の鳥は、風速ゼロの環境下では離陸するのに十分なだけの羽ばたきができないと試算した。ワタリアホウドリは平均22キロで、この心配はない。しかし、この試算を当てはめれば、翼竜は飛べなかったことになる。

 化石が発見されている翼竜としては最大のケツァルコアトルス(Quetzalcoatlus)は、翼開長11-12メートル、体重は100キロ台に達したと考えられている。

 9月に米スタンフォード大学(Stanford University)で行われた「国際バイオロギングシンポジウム(Biologging Science Symposium)」で佐藤氏がこの仮説を明らかにすると、飛ぶことのできた恐竜がただ風に乗るだけどころか、活発に飛ぶ勇姿を夢見ていた「翼竜ファン」の学者たちから非難の一斉放火を浴びた。ニュー・サイエンティスト誌によると、異を唱えた者たちは解剖学・生理学的見知、環境の差異などを考慮しなければ、2つの「飛ぶ者たち」を比較することはできないと反論したという。(c)AFP