【7月27日 AFP】イラン国営の衛星放送アルアラム(Al-Alam)のカイロ(Cairo)支局がエジプト当局の立ち入り捜査を受け、強制閉鎖された。アルアラムでは、故アンワル・サダト(Anwar Sadat)エジプト元大統領を描いたドキュメンタリー映画をめぐり、最近両国の関係が悪化する中、同放送のエジプト拠点が標的にされたと非難している。

 エジプト治安当局の高官が23日、AFPに語ったところでは、警察がカイロにあるアルアラムの事務所を21日、エジプトでの営業許可を取っていないことを理由に強制捜査し、カメラなど機材を押収した。

 しかしアルアラム側は、問題となっている故サダト大統領に関する映画の制作に同放送が関与しているとみられて、エジプト警察の捜査を受けたと主張している。

 アルアラムはウェブサイトで「『Assassination of a Pharaoh(ファラオの暗殺)』と題するイランのドキュメンタリーの制作に、われわれのニュース網が関与しているというエジプト政府の非難は、まったく事実無根だ」と反論した。また、アルアラム・カイロ支局のAhmed al-Soyufi支局長は、問題のドキュメンタリーのプロデューサーと同局の関連を否定しているという。

 このドキュメンタリー映画では、1978年のキャンプデービッド合意(Camp David Accords)により、翌79年にアラブ諸国として初めてイスラエルとの平和条約に調印したことが、サダト元大統領が暗殺された理由として描かれている。

 エジプトのアハマド・アリ・アブルゲイト(Ahmed Abul Gheit)外相は7月初旬、この映画に対する非難を表明、エジプト政府は駐カイロ・イラン大使を召還し、映画の放映について公式な抗議を伝えた。

 エジプトとイランの外交関係は、イラン革命の翌年にあたる1980年、エジプトによるイスラエルの承認に対するイランの反発や、追放されたイラン国王をエジプトが受け入れたこと、またイラン・イラク戦争(1980-88年)でエジプトがイラクを支援したことなどにより、危機的な状態になったことがある。

 最近では両国ともに関係改善の意志を示し、緩和の兆しを見せていた。(c)AFP