【6月26日 AFP】汚職はアフリカ・アジアの貧困層の水の確保を困難にし、水道料金はニューヨーク(New York)よりもケニアのナイロビ(Nairobi)の方が高い。世界各国の汚職実態を監視する非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」は25日、このような報告書を発表した。

 同団体は、汚職は重大な問題だが、世界人口の5人に1人が飲料水を確保できないという世界的な「水危機」においてしばしば見過ごされる問題だという。

 トランスペアレンシー・インターナショナルのユゲット・ラベル(Huguette Labelle)代表は、各国政府は汚職が水危機を招いていることを無視し、食料不足への努力を無駄にしていると指摘した。「水不足は食糧不足を意味する。かんがいにおける汚職も正さなければ、水危機の問題は解消されないだろう」

 報告書は、汚職が水資源の値段を引き上げ、水資源を不足させ、さらには水質汚染を招いていると指摘する。水関連部門の汚職は貧困層が不相応に負担することになり、開発途上国では結果的に、こうした汚職が水道料金を最大で30%も引き上げているという。

 実際、インドネシアのジャカルタ(Jakarta)、ペルーのリマ(Lima)、ナイロビ、フィリピンのマニラ(Manila)の貧困家庭における水道料金は、ニューヨーク、ロンドン(London)、ローマ(Rome)よりも高くなっているという。

 また、汚職のために野党支持者が多く住む地域の水道整備を政府が拒否したり、より多くのわいろが見込まれる高級住宅地への水道の整備が優先されるという。 

■「飲めない」水

 マラウイでは、1998年から2002年に整備された水道の半数以上は、飲料水をすでに十分確保できる地域で行われたという。

 サハラ以南のアフリカ諸国では、水道の不整備が人々を仕事や学校から遠ざけている。水を得られる一番近い場所まで、何時間も歩かなければならないためだ。そういった共同体は、悪徳業者の餌食になる場合もある。

 ナイロビでは、水道がない貧困層は、水に対して富裕層の5-10倍の金額を払っている。

 同様の問題はバングラデシュでも見られる。水の供給を独占して暴利を得ている「水マフィア」たちは汚職公務員と手を結び、水道網の拡大を阻止し妨害する。

 中国やインドでは、大規模なかんがいやダムの建設計画に汚職が絡み、安全に対する配慮は無節操な役人におざなりにされている。中国の三峡ダム(Three Gorges Dam)建設では、5000万ドル(約54億円)が役人に横領され、インドではかんがい計画の予算の25%が汚職によって消えた。

 公務員がわいろで稼ぐお金は、インドでは給料の10倍、パキスタンでは8倍にのぼるという。中国では、地方レベルでの小さな汚職の積み重ねが、「7億人が動物や人間の排せつ物によって汚染された水を飲む」状況を作り出しているという。

 報告書は、気候変動や人口増加が水不足を加速させるため、汚職は増加していくだろうと警告している。(c)AFP