【5月23日 AFP】カナダ・オンタリオ(Ontario)州の男性が、ペットボトル入り飲料水にハエの死がいが入っていたことから精神的苦痛を受け、性生活や美容院の経営、シャワーを浴びることさえ難しくなったとして損害賠償を求める訴訟を起こしていた問題で、カナダの最高裁判所は22日、男性の訴えを棄却した。

 原告は、同州ウィンザー(Windsor)に住むWaddah Mustaphaさん。訴状によると、Mustaphaさんと妻は2001年11月、配達された未開封の飲料水のペットボトルにハエの死がい1匹と、別のハエの一部が入っているのを見つけたという。開封前だったため、中身を口にすることはなかった。

 Mustaphaさんは「ハエ入りボトル飲料水を見たことで、重度のうつ、不安神経症、特定恐怖症、強迫観念に悩まされた」として飲料メーカー、カリガン(Culligan)に損害賠償を要求、公判が最高裁までもつれこんでいた。

 Mustaphaさんはカナダ放送協会(CBC)の番組で「誰でも知っているあの胴体の青いハエだ。路上の排泄物やネズミの死がいにとまったりした後で水の中で死んだんだ。これは公共衛生問題だ」と語った。

 下級裁判所は05年、原告の反応は「客観的に見ると奇妙」だがボトル飲料水は「清潔であること」が当然で、ハエが浮いているのをみつけた時の精神的苦痛は予見できたと判断。カリガンに34万1775ドル(約3560万円)の支払いを命じたが、翌年の控訴審は原告の逆転敗訴となっていた。

 最高裁判決は、被告には「精神的苦痛で原告を衰弱させ、原告の人生に重大な影響を与えた」責任は当然あるとしながらも、控訴審判決を支持。Beverley McLachlin裁判長は「過失による行為で、普通ではない反応や極端な反応が起こることは想像できることだが、必ずしも予測可能とは言えない」として、「通常の精神力を持つ人間でも、ボトル飲料水にハエが浮かんでいるのを見て深刻な精神的苦痛を受ける」ということを原告側は十分に証明できなかったと結論付けた。(c)AFP