【5月21日 AFP】フィリピンで問題となっているコメ不足の原因は食糧問題ではなく、劣悪な政策が農業セクターに損害を与えた結果だと、同国の著名な経済学者Rolando Dy氏が、21日に発表した報告書で指摘した。

「いわゆるコメ危機の真の姿は所得問題だ」と、マニラ(Manila)にあるアジア太平洋大学(University of Asia and the Pacific)食糧農業ビジネスセンターのエグセクティブ・ディレクターであるDy氏は批判している。

 フィリピンでは現在、大量の貧困層の人々が政府が助成する安価なコメを求めようと数時間の列を作っている。Dy氏によると原因は、「農業およびインフラへの投資不足、貧困撲滅の実績のなさ、劣悪なインフラ」などだという。「種をまかなかったものは収穫できない。他国と比較し、わが国は農村の貧困削減に失敗した」と述べ、中国やインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムとフィリピンの現状を比べた。

 フィリピンは世界有数のコメ輸入国。コメ生産が盛んな他のアジア諸国のように、コメ栽培に必要な地続きの土地と巨大な河川システムが欠如しているとDy氏は言う。しかし、フィリピンよりもさらにコメ輸入に依存しているマレーシアやシンガポールでは、長蛇の列を作るようなひどい事態は起こっていないと指摘する。

 Dy氏はフィリピンのコメ消費量が特別に多いことについて、人口の大半がいまだ貧困状態にあるため、コメ以外の食料を買うことができないからだと分析する。「貧しい人たちがあまりにもたくさんいる。彼らが買うことのできる食べ物といえば、小山ぶんほどのコメと、いくらかのケチャップ(トマトソース)程度だ」(c)AFP