【5月21日 AFP】第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で20日、クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督の最新作『The ExchangeChangeling)』がコンペティション部門出品作品としてプレミア上映された。1920年代のロサンゼルス(Los Angeles)を舞台に、息子が行方不明になるシングルマザーの実話を基にした映画だ。

 来週で78歳になるイーストウッドは、この映画で、最近の作品で一貫している「失われた無垢」のほかに、危険に陥った子どもをテーマにしている。

 主人公はアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)演じるシングルマザー、クリスティン・コリンズ(Christine Collins)。彼女の9歳の息子ウォルターが、ある日突然行方不明になる。数か月後、警察が息子を保護したと言って連れてくるが、クリスティンは彼が本物の息子ではないことに気づく。

 ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)演じる活動家の助けを借りながら、コリンズは、あらゆる手を使って行方不明の件をもみ消そうとする腐敗したロサンゼルス警察に戦いを挑み、汚職を暴いていく。

 イーストウッドは、プロデューサーのブライアン・グレイザー(Brian Grazer)に脚本を渡された時に「ストーリーに魅了された」と語る。「子どもが危険に陥るというのは、もちろん、最高のドラマのかたちだ」

 また、権力に疑問を呈する人々の物語にも惹かれると言う。「陰謀物の多くは、真実を知ろうとしたり真実を語ろうとするもの。俳優にとって最も重要な役どころの1つだ。誠実であることはこの世で最も崇高な美徳であり、それがどんなドラマも面白くする」

 2003年にカンヌに出品した『ミスティック・リバー(Mystic River)』では最高賞「パルム・ドール(Palme d’Or)」を逃したイーストウッドは、今回も、世界中から集まった一流の監督たちとの接戦を覚悟していると言う。「コンペティション部門で上映しないというのは、安全圏にいるようなものだ。わたしは安全圏に身を置くのではなく、コンペティション部門に出品したよ」

 アニメ映画『カンフー・パンダ(Kung Fu Panda)』のプレミア上映会のため前週カンヌ入りしたジョリーは、「家族についての自分の感情を移入できた」と語った。養子3人を含め4人の子を持つジョリーは、現在双子を妊娠中だ。「同じ事が自分に起こるとしたら・・・その痛みと失意は想像できるわ」

 また、役作りの上で、母親で女優のマルシェリーヌ・ベルトラン(Marcheline Bertrand)も参考にしたと語った。ベルトランは、撮影に入る数か月前の2007年1月に他界した。「クリスティンという人物は、お母さんによく似ている。彼女は多くの面でとても受け身で、そしてとっても優しかった。でも、子どものこととなると、ライオンみたいになるの」

 ジョリーは「(撮影中は)お母さんと一緒に過ごしていたようなものだわ」と語り、映画を今は亡き母親を見つめる旅になぞらえた。

 22日には1971年の『ダーティーハリー(Dirty Harry)』の復刻版が上映されるが、同作品の続編が制作されるのではとの噂をイーストウッドは否定。そばにいたジョリーが「なんなら、わたしがやろうかしら」とジョークを飛ばし、イーストウッドが「それなら『ダーティーハリエット』かね」と返す場面が見られた。(c)AFP/Deborah Cole

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)

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