【3月10日 AFP】海外の日本食レストランの普及・向上活動を行っている団体の理事長を務める食品メーカー大手キッコーマン(Kikkoman)の茂木友三郎(Yuzaburo Mogi)会長は10日、日本食は「柔道」からインスピレーションを得るべきで、国際化には譲歩も必要だと提言した。

 日本政府は海外の「本物の」日本食レストランに認証を与えるキャンペーンを開始しており、1月には「本物」の証明となるロゴマークも発表した。

 一方、欧州メディアの中にはこうした日本政府の活動を「スシ・ポリス」と呼んで冷やかす向きもあり、世界的に日本食人気が高まる中、努力の方向が間違っているとみなす声もある。

■海外で受け入れられるには譲歩も必要

 しかし、NPO「日本食 レストラン 海外普及推進機構(Organisation to Promote Japanese Restaurants Abroad)」の茂木理事長は、同普及活動において海外の日本食レストランは寛大に評価されるだろうという。

 茂木氏は、今月末に予定される「日本食レストラン国際フォーラム」開催に関する会見の席で、「海外で広く受け入れられるためには、食文化も譲歩が必要だ」と述べた。

「柔道がどのように国際的なスポーツになったかを考えれば、多くの譲歩もあったことが分かる」と語り、世界各地で愛好されるようになるに従い、各国では柔道家が色つきの柔道着を使うようになったり、重量別に階級が分けられるなど競技にも変更が加えられた点を引き合いに出した。

 茂木氏は、寿司の「カリフォルニアロール」のようなメニューも日本食文化の一部とみなすことは良いことだし、同時にインスタントヌードルもやはり立派な日本食だと述べた。カリフォルニアロールはアボカドやきゅうりなど野菜を具にした巻き寿司で、日本では日本食とはみなされていない。しかし茂木氏は「われわれは寛大であるべき。すしポリスといった言葉が聞こえるのは残念だ」と述べた。

 茂木氏によると、日本食レストラン海外普及運動の目的は質の向上、特に刺身用の魚など生の素材を扱う上での衛生面の向上だという。

 同機構の認定を申請するレストランに課される条件は、日本産のコメを使用していることと、日本の伝統素材に加えて調味料類も日本のものを使用することだ。また日本食の調理法に関する知識や衛生環境、顧客サービスなども評価される点に入る。

 同機構は前年7月に農水省の後押しで設立された民間の非営利法人。台北(Taipei)やバンコク(Bangkok)、上海(Shanghai)などに支所を構えているほか、今月末までにはアムステルダム(Amsterdam)、ロンドン(London)、ロサンゼルス(Los Angele)、パリ(Paris)などでも支所を開設する計画だ。 (c)AFP