【3月8日 AFP】英国国教会の最高指導者カンタベリー大主教がイスラム法(シャリア)の一部導入を容認すると発言して議論になっている問題で、英国の人気ミステリー作家ルース・レンデル(Ruth Rendell)氏(78)が6日、大主教の発言は「旧態依然として」「逆行的だ」と苦言を呈した。

 レンデル氏は男爵の爵位を持つ女男爵(Baroness)で、1997年から上院(貴族院)議員。著書の多くは世界的なベストセラーになり、25か国語に翻訳されている。また、バーバラ・ヴァイン(Barbara Vine)というペンネームでも執筆している。

 英国国教会の最高位にいる人物がイスラム法の部分導入を容認すると述べたことについて、「女性にとっても、男性にとっても英国の法体制にほかの法制度を持ち込む必要などない」と大主教に反論。「数週間前にカンタベリー大主教が、英国にはすでに別の法体制やシャリア法廷が存在していると発言したことは多くの人にとって驚きだった」と述べている。

 また、「英国の女性にとってイスラム法を適用するというのは、残念で時代に逆行するものだ。この国の女性たちは、自分たちの所属する法体制が身を守って支えてくれるものだと教育を受けている」と、イスラム教の教えが現代の英国女性にとって、受け入れがたいものだと指摘。

「シャリアは男性が女性の面倒をみるという考え方をするが、これは男女平等が基本となっている我々の文化においては、女性が男性よりも劣った存在だと見ているように聞こえてしまう」と続けた。

 さらに、イスラム教を初めとするほかの信仰を尊重すると強調した上で、「ほかの宗教への敬意や、ほかの信仰を持つという権利を拒絶せずに、異文化の慣習を議論することは大切だ」としている。

 一方で、「国内にあるしっかりしたイスラム教徒団体でシャリア導入を求めているところはないし、シャリアを求めるイスラム教徒の女性もほとんどいない。シャリアが必要だと主張する人々は、英国の法体制との違いを理解していないのだろう」と述べている。

 この問題は、ローワン・ウィリアムズ(Rowan Williams)カンタベリー大主教が今年2月7日、出演した英BBCラジオの番組内で、イスラム法の一部導入を容認すると発言したことが発端。英国内で暮らすイスラム教徒約160万人を対象に、イスラム法の適用の可能性について述べた。この発言は英国内で大きな論議を呼び、英国国教会内部からも大主教の辞任を求める声が上がっている。(c)AFP