【2月29日 AFP】世界40か国のイスラム教徒を対象に行われた大規模な聞き取り調査で、これまで欧米がイスラム教徒に対して抱いてきた「過激派」「残酷」といった先入観が覆されるような結果が、26日明らかになった。

 調査は、2001年の9.11米同時多発テロ直後から6年以上にわたり、アフリカ、アジア、欧州、中東のイスラム教徒10億人以上を対象に、米調査会社ギャラップ(Gallup)が実施したもの。きっかけとなったのは、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領が事件後に行った演説だった。

■イスラム教徒が嫌うのは「民主主義の押しつけ」

「彼ら(=イスラム教徒)はなぜわれわれを憎むのか? それは、彼らが民主的に選ばれた政府、宗教や言論の自由、選挙や集会や他人の意見に賛同しないといったような自由を憎んでいるからだ」と大統領は演説で述べた。

 ところが調査の結果は、ブッシュ大統領のこうした見解とは正反対のものだった。急進派の少数を含め、回答者の大半が、西洋の民主主義、自由、高度なテクノロジーを嫌うどころか、「あこがれている」ことが明らかになったのだ。一方、彼らが嫌っているのは「西洋の考え方を押しつけられること」だという。

 調査結果を『Who Speaks for Islam』という本に共同執筆したジョージタウン大学(Georgetown University)のジョン・エスポジト(John Esposito)博士(イスラム学)は、「イスラム教徒は自分で物事を決めたいと考えている。米国が押しつける民主主義や世俗主義などは欲しくない。彼らが欲しいのは、宗教的な価値を持った民主主義なのだ」と語る。

■急進派は貧困層出身とは限らない

 調査では、世界のイスラム教徒の93%は穏健な人びとで、政治的な急進派は残り7%に過ぎないという結果も出た。急進派の信仰心が特にあついというわけでななく、また急進は貧困層や難民キャンプから生まれるわけではないことも示されている。

 博士によると、政治的な急進派は学歴が高く、高給の職業に就いていて、穏健派以上に将来を楽観視している。民主主義の価値も高く評価しているが、それを手に入れられるかについては穏健派よりも悲観的だという。

 本の共同執筆者でギャラップ社のイスラム研究センター長、Dalia Mogahed氏は、「われわれは、声を上げる少数派のイスラム教徒ではなく、物言わぬ10万人のイスラム教徒を見て判断すべきだ」と語っている。(c)AFP