【2月14日 AFP】中国での不正医薬品をめぐるおとり捜査に関する調査報告が12日、米国の電子ジャーナル「PLoS」に発表された。調査を実施した英国の科学者チームは、アジアの警察と製薬監視団体が密に連携し、このような危険な犯罪に立ち向かう必要があると主張した。

 東南アジアでは偽のマラリア治療がまん延している。問題の薬は、血中の耐マラリア性寄生虫を殺す作用を持つアルテスネイトを十分に含んでいない上、服用した患者の体調が悪化したり死亡したりする危険性のある毒物を含んでいた可能性もあるという。

 研究報告では、偽物の抗マラリア薬を売っていた中国の犯罪組織の逮捕につながった極秘任務「ジュピター作戦(Operation Jupiter)」が説明された。作戦は国際刑事警察機構(InterpolICPO)と世界保健機関(World Health OrganisationWHO)の協力の下に行われた。

 英オックスフォード大学(Oxford University)とウェルカムトラスト(Wellcome Trust)の科学者らは、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジアおよびタイとミャンマーの国境地帯で収集された本物および偽物のアルテスネイトの標本391個を分析した。分光計を用いた分析により、391個のうち49.9%に当たる195個がアルテスネイトを全くまたはごく微量しか含んでいないことが分かった。さらに、一連の検査により、ホログラムシールが偽造されていたことも突き止めた。偽造シールの大半には、中国南部の大手製薬メーカーのロゴが印刷されていた。

 しかし、最大の決め手は、法医学的花粉学という高度技術を用いた分析だ。これは標本に付着した微少な花粉を検出するだけではなく、その発生地を特定することができるのだ。これにより、少なくともいくつかの不正医薬品は中国南部から運ばれていることが分かった。これは標本に付着していた鉱物、方解石の分析結果でも裏付けられた。

 「ジュピター作戦」の責任者は2006年3月、これらの情報を中国の国家安全省に提出。警察は広東(Guangdong)に偽薬製造工場を持つ男から25万個の偽薬を購入した容疑者を雲南(Yunnan)省で逮捕した。容疑者は現在、裁判を待っている。(c)AFP