【12月18日 AFP】飼い主による動物虐待の疑いで保護されていたオマキザルのアルマーニ(Armani)が10日、7か月にわたる法廷闘争の末、米ワシントン(Washington)郊外ロックビル(Rockville)の飼い主の家に帰された。

「彼が話すことができたらきっと、『ママ、僕を連れ戻すために戦ってくれてありがとう。僕のことを絶対にあきらめないでくれてありがとう』と言うでしょう」とアルマーニの飼い主のエリゼ・ガズウィッツ(Elyse Gazewitz)さんは語る。

 2006年、フロリダ(Florida)のブリーダーからガズウィッツさんのもとにやってきたアルマーニは、今年の5月に当局に保護された。

 発端となったのは、ガズウィッツさんがアルマーニに与える餌について相談するため、動物保護施設を運営している女性に掛けた1本の電話だった。この女性はガズウィッツさんにもアルマーニにも会ったことがなく、ガズウィッツさん宅を訪れたこともないにもかかわらず、アルマーニが餌を与えられず衰弱しており、獣医師の診断が必要だと動物管理当局に連絡した。

 翌日、警察と獣医師がガズウィッツさん宅を訪れてアルマーニを連れ去り、以後7か月間にわたって動物園で「保護」下に置いた。

「お別れのために15分だけくれました。第2次世界大戦時の召集のようだった」とガズウィッツさんは連れ去りの様子を語った。

 こうして、アルマーニを取り戻すためのガズウィッツさんの長くつらい法廷闘争が始まった。

 家族法と犯罪法が専門だが動物法にも詳しい有能な弁護士アン・ベナロヤ(Anne Benaroya)さんの活躍もあり、判事は前週、アルマーニをガズウィッツさんの元に返すよう郡当局に命じた。

「人と動物の関係が変化しつつあることを認識するよう、裁判所に働きかけています」とベナロヤさんは語る。「法の下ではいまでも、動物も芝刈り機もコンピューターも違いはなく、すべて単なる『モノ』としてみなされます。(ガズウィッツさんにとって)アルマーニは『モノ』ではなく子どものような存在であることを主張するため、膨大な資料を提出しました」

 ガズウィッツさんとアルマーニの勝利は、法廷でも認識が変わりつつあることを示している。

 弁護士会の中に動物法委員会を設置している州もある。過去の判例から米法曹界が動物を単なるモノから、人と強い心のきずなを築くことができる価値ある存在とみなすようになっていることも伺える。

 ガズウィッツさんは、この7か月間に動物園から「飼育費」として月1300ドル(約15万円)を請求され、経済的にも苦しかったそうだが、本当につらかったのは精神的な痛みだった。

「アルマーニを失うつらさは言葉では表現できません。人生で一番つらい出来事でした」と当時を振り返ると同時に、「彼への愛が郡当局との戦いに勝ったのです。国内外からたくさんの支援の申し出を受けました。裁判費用の負担や、手紙で群当局に働きかけることを申し出てくれる人もいました」と支援者への感謝の言葉を口にした。

 アルマーニが無事に戻った今でも、アルマーニがそこにいるのを見て驚くことがあるという。

「彼は親友であり家族です。支援してくれたすべての人に感謝しています。アルマーニも感謝していると思います。わたしが話してきかせたから、ちゃんとわかっているはずよ」(c)AFP/Karin Zeitvogel