【11月28日 AFP】中国の首都北京(Beijing)駅前で自転車整理係をしているGuo Guiyouさん(40)。突然、大きな音を立てて路上にたんを吐き出した。「たんを吐くのはいいことだ。健康にいいんだよ」と悪びれる様子はない。

 北京五輪開催を翌年に控えたマナー向上運動の一環として、たんを吐くのは「文明的ではない」との意識は広まりつつあるが、たんを吐く光景とその音は中国名物と言えるほど、国内の至る所で目にする状況は変わらない。

 政府はたん吐きを禁止しており、違反すれば罰金50元(約740円)が科せられる可能性があるが、「構わないさ。ほとんど誰も見てないから」とGuoさんは言う。

 中国の最高実力者だった故鄧小平(Deng Xiaoping)氏もたん吐きで有名だった。1970年代から80年代にかけ、人民大会堂(Great Hall of the People)で国賓と接するときは、自慢のたんつぼを手元に置いていた。

 多くの中国人にとって、たんを吐くのはくしゃみやげっぷと同じような生理現象で、恥じるべき行為ではない。医学専門家によると、たんは一般的に呼吸器感染症にかかっている場合に生成されるが、大気汚染、あるいは喫煙や油っこい食事の食べすぎといった生活習慣で、肺が刺激されるのが原因の場合もある。

 北京のXuanwu病院の呼吸器系専門医、Li Yan氏は、大気汚染が一因となって呼吸器感染症がまん延していること、および衛生観念の欠如が、たん吐きの原因になっていると見る。「中国の都市の多くで、空気の乾燥と大気汚染のせいで呼吸器に粘液がたまり、たんが生成される症状がみられる」とYan氏は言い、結核、肺炎、インフルエンザといった空気感染症がたんを媒介として感染する恐れもあると指摘した。

 中国当局は先に、来年8月の五輪までに北京住民のマナーを国際標準並みに向上させるのは、新しい競技場を作るよりも難しい仕事だと認めている。

 一般の住民にはそんなことなどお構いなしという人も。Guoさんは「一市民が国のやることなど構っていられない。はっきり言って、どうでもいいよ」とどこ吹く風だった。(c)AFP/Verna Yu