【11月26日 AFP】第2次世界大戦中にナチス親衛隊(Waffen SS)の隊員だったことを告白したノーベル賞作家ギュンター・グラス(Guenter Grass)氏が、別の作家がグラス氏の人生を記した伝記で使用された表現をめぐり、同書の出版元ランダムハウス(Random House)に出版差し止めを求める訴えを起こしたことが分かった。デル・シュピーゲル(Der Spiegel)誌のオンライン版が23日、報じた。

 同誌の報道によれば、問題となっているのはMichael Juergs氏の著書『Buerger Grass』の中で使われている、「ギュンター・グラスは、17歳のとき、ナチス親衛隊に自ら進んで入隊した」という表現だという。

 『ブリキの太鼓(Die BlechtrommelThe Tin Drum)』などの代表作で知られるグラス氏は2006年、自叙伝『Beim Hauten der Zwiebel(英題:Peeling the Onions)』で、ナチス親衛隊の隊員だった過去を明かし、文学界に衝撃を与えた。人に対して銃口を向けたことはないと宣言した同氏だったが、真実を60年にわたり隠していたことが非難され、ドイツ国民につらい過去を思い出させることとなった。

 グラス氏の弁護士によれば、同氏はベルリン市内の裁判所に、Juergs氏が間違いと知りながら「進んで入隊した」という表現を用いたとする訴状を提出したという。さらにグラス氏はその中で、「ナチス親衛隊への入隊はわたしの意思とは関係なく起こった」と断言しているという。

 『Buerger Grass』は、ランダムハウス系の出版社Goldmannから出版されている。Goldmannの法廷代理人は、判決が出るまで同書が回収されることはないだろうと語った。(c)AFP