【11月16日 AFP】ガンジス(Ganges)川とブラマプトラ(Brahmaputra)川から流入する大量の陸地の炭素をため込むベンガル湾(Bay of Bengal)が、地球温暖化対策の鍵を握っているかもしれない。フランスの研究チームが15日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に研究結果を発表した。

 土手や野原から洗い流された土や植物といった陸地の炭素は、河川を流れ、海洋に流れ込む。しかし、炭素を大量に含んだ堆積物が河口にたどり着いた後どうなるかについては、これまでほとんど知られていなかった。

 かつてアマゾン川流域で行われた調査では、河川に含まれる有機体炭素のうち70%が、大気中にガスとして排出されることが判明している。排出されたガスが、化石燃料による温室効果をさらに後押ししている仕組みだ。

 だがネイチャー誌に掲載された論文で、このプロセスがもっと複雑なものであることがわかった。

 仏ナンシー大学(Nancy University)のValier Galy博士率いる研究チームが行った調査によると、ヒマラヤ山脈からガンジス・ブラマプトラ水系を流れてたどり着く陸地の炭素の約70-85%が、大気中にガスとして排出されずに海底に流れ込んでいるという。

 理由は、ヒマラヤ山脈の浸食によりベンガル扇状地に発生する大量の堆積物にある。ヒマラヤ山脈からベンガル湾へは、年間10-20億トンの堆積物が流れ込む。そのため、アマゾン川の河口とは異なり、大量の堆積物が酸素にあまり触れることなく河口に着くことになり、有機体炭素の生物分解に必要な微生物が死に絶える。微生物が死に絶えた堆積物は激流によって海底に押し込まれ、数百万年にわたって安全に炭素が閉じ込められる仕組みだ。

 自然界において、温室効果ガスを大気中に排出せずにためる機能を持つ場所は、「シンク(吸収源)」と呼ばれている。シンクは温室効果ガスを吸収することで、地表温度の上昇を防いでいる。

 推定によれば、海底に閉じ込められている炭素の3分の1は陸地のものだ(残りは大部分がプランクトンの死がい)。Galy博士は陸地由来の炭素の10-20%をベンガル湾の海底が吸収しているとみており、今回予期せずに発見されたこのシンクに大きな期待を寄せている。

 一方、ネイチャー誌電子版に15日に公開された別の2つの論文も、シンクの役割を果たしうる2種類のバクテリアが新たに確認されたことを明らかにしている。

 オランダとニュージーランドの研究チームがイタリアの火山の噴火口周辺、ならびにニュージーランドのヘルズゲート(Hell's Gate)地熱地帯で発見したこれらのバクテリアは、メタンを食べる性質がある。

 科学者らは、それぞれAcidimethylosilex fumarolicumとMethylokorus infernorumと名付けたこれらのバクテリアによって、地殻から発生するメタンを減少させられるのではないかとみている。

 メタンガスは、排出量としては二酸化炭素に次ぐ温室効果ガスであり、太陽熱を閉じ込める力では二酸化炭素の数倍強力とされる。(c)AFP