【10月30日 AFP】韓国の柳明桓(Yu Myung-Hwan)駐日大使は30日、高村正彦(Masahiko Komura)外相と会談し、1973年の金大中(Kim Dae-Jung)氏拉致事件に関して当時の中央情報部(Korean Central Intelligence AgencyKCIA)の関与を認めるとともに、日本の主権を侵害したことについて陳謝した。

 事件については24日、真相の究明にあたっていた韓国国家情報院(NIS)の委員会が、KCIAの関与、ならびに朴正熙(パク・チョンヒ、Park Chung-Hee)大統領(当時)による事件容認を報告していた。
 
 植民地問題などで韓国と微妙な関係にある日本政府は、これまで事件についてあいまいなままにしてきたが、報告を受けてからは一転して謝罪を求めていた。

 会談内の「主権侵害だった」との発言について高村外相が「謝罪と受け止め、そのように発表してよいか」と柳大使に確認したところ、同大使から「それで構わない」との返答を得られたという。

 また高村外相は、事件について日本側が再捜査を行うかどうかは警察が決めることだが、万が一、再捜査になっても、外交問題に発展することはないとの見解で一致したことも明らかにした。

 これを受け福田康夫(Yasuo Fukuda)首相は、「この問題はこれ以上、追及しなくていいのではないか」と記者団に語り、今後の両国関係を重視する姿勢を示した。

 一方、来日中の金氏は同日、京都市内で記者会見を開き、「(報告書は)真相を明らかにしていない」「日本は主権侵害される一方で保護責任を放棄した。これは人権侵害だ」「韓国政府も人権を無視した」などと述べ、両国政府を批判した。(c)AFP/Kyoko Hasegawa