【10月28日 AFP】28日付の英日曜紙メール・オン・サンデー(The Mail on Sunday)によると、トニー・ブレア(Tony Blair)前英首相がイラク戦争についてジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領を強く支持したことにパウエル前米国務長官が当時、驚いていたことが分かった。

 同紙が連載している、著名な政治評論家でブレア前首相の伝記作家でもあるAnthony Seldon氏による著書「Blair Unbound」の中で、パウエル前長官とジャック・ストロー(Jack Straw)元英外相が、ブレア前首相にブッシュ大統領のイラク侵攻を踏みとどまらせるよう説得したが、大統領と面会した瞬間にブレア元首相が「勢いを失った」ようになってしまった様子が書かれている。

 パウエル元長官は、2002年に「戦争を行うという計画は急速に進んでいたが、わたしにはそれを十分に練ったという確信がなかった。一体、われわれは何に足を踏み入れようとしているのか」と自問自答したことを語ったという。また、自身とストロー元外相は、「われわれの指導者2人が、サダムを排除することにより起こりうる影響を十分に理解していたのか懸念していた」と述べた。

 さらにパウエル前長官は、ブレア前首相とブッシュ大統領の「特別なきずな」にも驚きを隠せなかった。

「結果的には、ブレア氏は常に大統領を支持しようとした。意外だった。わたしはいつも、『9.11同時多発テロで英国は攻撃されていないのに、なぜそれほど大統領に同調するのか。ブレア氏がサダムを脅威と考える理由はあるのか』と考えていた。ジャック(・ストロー元外相)と一緒に、大統領に言い聞かせるよう説得し、首相も『ジョージ、ちょっといいかな』と言おうとするのだが、大統領に会った途端に気勢をそがれてしまうんだ」

 また、英国のクリストファー・マイヤー(Christopher Meyer)元駐米大使ら高官はブレア前首相の側近にイラクについて「必要なのは率直な会話だ」と説得したという。同書によると2002年、マイヤー元大使は「首相は大統領に、英国の名誉や中東での権益にダメージを与えると話すべきだ」と前首相の側近にあてて書いたというが、側近らは説得できなかったという。

 2006年にブッシュ大統領が追加派兵を提案したときも、ブレア前首相は支持する姿勢を崩さなかったことも同書に書かれている。

 ある元高官は、「最後の最後まで、首相はブッシュ大統領と仲たがいしたと見られたがらなかった」と述べている。(c)AFP