【10月18日 AFP】フィリピンとフランスの外交関係樹立60周年の今年、フィリピンで活動するフランスの非政府組織(NGO)の活動を紹介する初めての展覧会が19日から、パリのPalais D'IenaにあるEconomic and Social Councilで開かれる。

 展覧会の発起人で自身も25年以上フィリピンで活動するNGO「Together Ensemble財団」のHubert d'Aboville代表は、「Together Ensemble財団がビジネスと貧しいフィリピン人をつないでいるように」、この展覧会が両国関係の橋渡しとなることを望んでいる。「普通のフランス人は、フィリピンは自然災害が多発する貧しい国だという認識くらいしか持っていないだろうが、この展覧会によって、フィリピンの人々は自然災害に見舞われても笑顔を保ち続けられるという素晴らしい能力を持っていることが分かるだろう」

 フィリピンで活動するフランスのNGOの数は正確には分からないが、仏大使館は25団体と推定している。

■カトリック神父による教育支援

 恐らくその中で最も有名なのが、フランスのイエズス会(Jesuit)所属のピエール・トリッツ(Pierre Tritz)神父(93)だろう。母国ではそれほど知られていないが、ここフィリピンでは、マニラ(Manila)の路上生活児の教育支援活動で、故マザーテレサ(Mother Teresa)に匹敵する知名度を誇る。

 穏やかな口調で話すトリッツ神父が1974年に設立した「エルダ財団(Educational Research and Development Assistance FoundationERDA)」は、同国でも有名なNGOの1つで、創立以来20万人以上の子供が巣立っていった。


■スラム生活を経て財団設立

 Bernard Pierquin氏(58)は、1990年、フランスのラロシェル(La Rochelle)にある自身の薬物依存症治療施設で信仰治療を行ってくれる人を求めてフィリピンにやって来た。しかし出合ったのは怪しげな人物ばかりだった。

 貧窮したPierquin氏は、それから2年間をマニラのマリバイ(Malibay)地区のスラムに暮らした。この地域にはこの地域に住む数百世帯のゴミ捨て場と下水道の役割を兼ねた川が流れていた。

「金がなかったので、生き延びるために持ち物すべてを売り払った。貧乏というのがどういうものか知りたかった」暗く湿った通路が入り組んだスラム街の奥深く、木造の小さな部屋に住んだ。「雨が降ると水が部屋に流れ込み、夜になるとネズミが走り回った。スラムの中は完全に別世界だった」

 この経験に深い衝撃を覚えたPierquin氏は、1993年、貧しい子どもたちに教育を受けさせるためAlouette財団を設立した。現在、同財団はセブ(Cebu)など8か所で活動を展開している。

■福祉施設を運営、最近は高齢者も対象に

 20年前にマニラでVirlanie財団を設立したDominique Lemay氏は、最大の問題は「お金だ」と言い切る。2006年にVirlanie財団に寄せられた寄付金の95%はフィリピン国外からのものだった。

 フランスでソーシャルワーカーをしていたLemay氏は、「経費は毎年増加している。面倒をみる子供の数も増えている。だから金はいつも大きな問題だ。特に今後の展開や将来の計画を考えるときに非常に重要な問題になる」

 同財団は、路上生活児や売春する子供、障害のある子供、最近では高齢者にも、安全な宿泊場所と食事を提供する施設をマニラで13か所、運営している。子供たちには教育も受けさせている。20年間で1万人の子供を支援したという。

■状況は改善せず

 Lemay氏は、「路上生活する家族が増えている。20年前はそんなにいなかった」と指摘、20年間で路上生活児を取り巻く状況は改善していないという。「NGOとしてできることは限られている。時として非常に悲しいことだ。しかし1人でも救うことができれば、それは前進だ」(c)AFP/Karl Wilson