【10月10日 AFP】イラクの首都バグダッド(Baghdad)で進行中の米国大使館の建設にさまざまな問題が続発して工期が大幅に延び、今年9月に予定されていた開館が遅れている。

 3か月前に米国務省は議会に対し、バグダッドに建設中の駐イラク米国大使館は9月に完成すると報告していた。しかし現時点で工期完了のめどはたっておらず、1年以上遅れる可能性も出ているという。同大使館は完成すると、世界最大の米国大使館となる。

 遅れの原因は建設工事のずさんさや安全性の不行き届き、業者の不正や内輪もめ、費用の肥大化などが絡み合っている。米議会ではコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官が非難の矢面に立っている。

 当初は総工費約6億ドル(約700億円)の予算だったが、最も多くの疑問が付されているのが施設の安全性だ。

 国務省の報告によると、完成予定日数日前に実施された検査では、火災発生時に対応させるべき水道の引き込み管5か所で不備が見つかり、施設内21の建物いずれの火災用自動スプリンクラー・システムも信頼できないことが発覚した。また火災警報システムもすべて、試験実施が可能な状態にまで至っていなかった。報告では同大使館の消火システムについて「すべての設備が不十分」と判断している。

 建築工事の質が水準以下であるという疑いに加え、工事の主要請負先であるクウェートの建設会社First Kuwaiti General Trading and Contractingが、わいろや水増し請求などの不正に関与していたことが発覚した。この経緯により、工事落札が決定するかなり以前から、同社受注に対する「警告」が発せられていたという。

 政府歳出を監視する米下院監視・政府改革委員会のヘンリー・ワックスマン(Henry Waxman下院議員(民主党)は、「このような重要プロジェクトを同社に委託する判断については、必然的に警告を発せざるをえない」と強く批判している。同委員会ではこのクウェートの建設会社が進行している米大使館の工事について調査中だ。

 ワックスマン議員によると、巨大施設や複合施設の建設プロジェクトにおいては、最終的な調査で補正・修正工事が必要となることは通常で、委員会ではバグダッドの米大使館建設についても残工事一覧をあげているという。

 また、ワシントン・ポスト(Washington Post)紙が前週、当初5億9200万ドル(約694億円)だった建設予算に1億4400万ドル(約169億円)が追加されるだろうと報じた点について、ショーン・マコーマック(Sean McCormack)米国務省報道官は否定せず、「これは予算超過ではない。追加建設に必要な額だ」と述べ文官、軍人を問わず政府高官のために安全な執務スペースを追加し、またより文官用の居住スペースを追加したためだと説明している。

 しかしマコーマック報道官は工期延長後の新たな完成予定日については明らかにできなかった。(c)AFP/P. Parameswaran