【東京 31日 上間常正】「ピアジェ(PIAGET)は伝統のあるブランドで、同時にとてつもなく大胆なのです」

 東京・六本木の新国立美術館で開かれたピアジェの「エクストラヴァガンザ」展のために来日したフィリップ・レオポルド-メッツガー(Philippe Leopold-Metzger)CEOは、インタビューで最初に強調した。今回の展示イベントの最大の目的は、「過去の歴史的な作品と最新作によって、ピアジェのそうした特質をトータルにお見せすること」だという。

■誰にも真似できないスタイル

 展示作の中心となった1960,70年代の時計は、ビンテージと呼ぶにはあまりにも未来派的だ。その奔放ともいえる色遣いやブレスレットと一体となった前衛的なフォルムが見る目を驚かせる。「どれもが、一目でピアジェだとわかるぐらい個性的で、だれにも真似できないスタイルを作り出しています」

 「60、70年代は新しいものを作る自由と情熱があふれていました。時代がピアジェ本来の冒険的な創造性を存分に引き出した時だったのです」。しかし、その後の流れは、クリエーションよりもマーケティングに向かった。ピアジェにとっては流れに対抗していく時代となった。

 フランスの個性的アーティスト、ピエール&ジルとの広告ビジュアルでのコラボレーションも、互いの革新的な創造性を引き出し合って確認するための試みだった。「私たち工房では厳密な技術教育と自由な発想を育む努力を続けてきたが、彼らとのコラボは大きな刺激となった」

■日本と中国の市場、重要

 今回の展示では、このコラボにドレス キャンプのデザイナー岩谷俊和とモデルの杏が加わったポートレート作品が発表された。「岩谷さんとは2年前にポセションのデザインで大きな刺激を受けた。杏さんには去年ピアジェのアンバサダーを務めてもらいました」。しかし、ピエール&ジルと岩谷が以前に交友があったことは、企画を決める段階では知らなかったという。

 「結果的にはそれぞれのコラボがとてもうまく溶け合って、彼らから大きなものがピアジェに与えられました」。ポートレートの新作は、異質なものが不思議に融合し、同時に何か東洋的な激しさをはらんだ静けさを漂わせている。「日本と中国のマーケットはピアジェにとって最も重要なところです。しかし、作品作りであえてそこを意識したというわけではありません」

 結果がどうであれ、ピアジェのもの作りの姿勢は、「あくまでもイクスクルーシブであること。数は少ないが、製品の質の高さとクリエーションの自由を守ることを目指したい」という。「それが日本の方々に評価されている点だと思います」

◆フィリップ・レオポルド-メッツガーCEOは1954年、ニューヨーク生まれ。シカゴのノースウエスタン大学ケロッグビジネススクールでMBAを取得。81年にカルティエに入社、リシュモングループの中で数々の重要な役割を歴任。99年から現職、21世紀の新たなピアジェの展開を指揮している。(c)MODE PRESS