【7月23日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者らパキスタンに潜伏しているとみられる同組織の中核部では、イラク戦争を機に成長した同組織の金銭的・人的資源や戦闘能力を、米国本土に対する新たな攻撃に振り向けようとしている、と米情報当局が報告した。
 
 米政府は17日に一部を公開した機密報告書「国家情報評価(National Intelligence EstimateNIE)」の中で、イラク戦争により、アルカイダや各地の同盟組織は潤沢な資金や、優れた人員勧誘ネットワーク、爆弾生産能力などを持つ世界でも有数の戦闘組織に成長したと分析。ビンラディン容疑者らアルカイダ指導層は、蓄積された組織力を米国本土に対する新たな攻撃に活用しようとしていると警告した。

■「アルカイダ・イラク」

 同報告書では「アルカイダ・イラク(Al-Qaeda in IraqAQI)」が具体的な計画に積極的に関与している証拠は示されていないが、情報当局および米軍関係者らは、現在アルカイダの活動を支える資源の大半がイラクと結びついているという。評価分析の主任担当官Ted Gistaro氏は報道陣に対し、アルカイダが人員募集および資金集めで日常的に各地のネットワークを活用していると指摘した上で、「資金について言えば、AQIとの関係が利益をもたらしていることが分かっている。アルカイダの中心部が組織強化のために、AQIのほかのどの部分を活用しようとしているのかに注目している」と述べた。

 専門家らは、報告書の指摘はこれまでになかった内容だと述べる。AQIに対し、アルカイダ指導部が欧州や米国本土での作戦実行を要請したメッセージが、報告書の非公開部分に含まれている可能性があり、そうした内容が反映した分析結果ではないかとみる。

 米国防総省は4月、イラクに入国しようとしていたアルカイダ幹部Abd al Hadi al-Iraqi容疑者を拘束したことを明らかにした。同容疑者はイラク国内でアルカイダ関連組織の作戦を指揮し、欧米に対する攻撃計画を指導しようとしたとみられている。対テロリズム当局のある米高官は「パキスタン国内のアルカイダ勢力は、自分たちの企図する攻撃に要員や資金などを提供するようAQIに働きかけている」という。

■豊富な資金、戦闘員

 元米中央情報局(CIA)高官で米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)サバン中東政策センター(Saban Center for Middle East Policy)のブルース・リーデル(Bruce Riedel)氏は、「AQIが提供しているのは資金と網の目のように張られた戦闘員採用ネットワークだ」という。「アルカイダの活動やイラクの反政府活動はイスラム世界では非常に人気が高い。AQIに自分の組織だけで使いきることのできる以上の資金があふれているのは当然といえる」。またイラクで戦闘経験を積んだ人物を「ほかの者を訓練するために採用することもできる。自国での攻撃を企む人物を訓練したり、また訓練を受けた人間を欧州やほかの中東諸国、正式な旅券さえあれば米国本土への攻撃に向かわせることもできる」と警告する。

 2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、米国本土に対する大規模なテロ攻撃は起こっていない。またアルカイダ対策を中心に厳重な治安態勢が強化されてきた。

 しかしマイケル・マコネル(Michael McConnell)米国家情報長官は今週、「アルカイダは訓練を積んだ戦闘員を米国国内に侵入させようとあらゆる努力を払っている」と警告した。米国市民として適合する言語能力と個人背景を持つ人物が勧誘・採用され、アルカイダが実質上自由に活動しているパキスタン内の訓練キャンプに送られているという。

 アルカイダはこれまでにも、英国の旅券を持つパキスタン人を英国での攻撃に使ったほか、北アフリカの関連組織を通じ、フランスやベルギーの旅券保持者の勧誘を行っていた。米情報当局では、欧州を「玄関口」とするアルカイダ戦闘員の入国を懸念している。(c)AFP/Jim Mannion