【6月30日 AFP】ニュージーランドのクライストチャーチ(Christchurch)で開催中の国連教育科学文化機関(United Nations Educational、 Scientific and Cultural OrganizationUNESCO、ユネスコ)の世界遺産委員会(World Heritage Committee)は29日、世界遺産への今年の新規登録について取りまとめ、新たに22か所の追加を決定した。

 同日新たに登録されたのは、セルビアのGamzigrad-Romuliana、アゼルバイジャンのゴブスタン(Gobustan)の岩絵の文化的景観、メキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autonoma de MexicoUNAM)の中央キャンパス「大学都市(University City)」。

 セルビア東部にあるGamzigrad-Romulianaは、3世紀終わりから4世紀初頭にかけて、ローマ皇帝ガレリウス・マクシミアヌス(Caius Valerius Galerius Maximianus)の命の下に築かれた城で、とりでや居城、バシリカ、教会、浴場、記念建造物などで構成されている。同委員会の声明によると、ローマ時代の建築様式を示すもので、儀式的機能と記念物としての役割が融合しているところに特徴がある。

 アゼルバイジャンのゴブスタン(Gobustan)の岩絵の文化的景観は、同国中部の半砂漠地帯に隆起した3つの巨群を含む。卓越した壁画や岩壁彫刻約6000点からなり、岩絵の4000年の歴史をたどることが出来る。集落や墓の跡もあることから、最後の氷河期に続く湿潤な中世まで同地域に人々が集約的に定住していたことをうかがい知ることが出来る。

 メキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autonoma de MexicoUNAM)の中央キャンパスが広がる「大学都市(University City)」は、1949-52年にかけてメキシコシティ(Mexico City)に、60人を超える建築家と技術者、芸術家によって建造された。その結果、同キャンパスはメキシコ先住民の伝統、特にスペイン人による征服以前の伝統様式をも垣間見れる20世紀モダニズムの珍しい一例となっている。同委員会は「中南米における最も重要なモダニズムの象徴の一つ」と評価。

 今回の新規登録により世界遺産の登録件数は、文化遺産660、自然遺産166、複合遺産25の計851件となった。

 同委員会は一方で、初めて登録の取り消しも行っている。対象となったのは、オマーンの「アラビアオリックスの保護区(Arabian Oryx Sanctuary)」。同保護区は、希少動物アラビアオリックスの保護のために設けられたものだが、オマーン政府が保護区の規模を90%削減することを決定したため、登録抹消となった。(c)AFP