【6月7日 AFP】 ドイツ北部のハイリゲンダム(Heiligendamm)で開催中の主要8か国(G8)首脳会議の本会議を前に7日、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に対し、米国によるミサイル防衛システムの東欧配備計画について「呼吸を荒げないよう」、冷静な対応を求めた。

 ブッシュ大統領は、トニー・ブレア(Tony Blair)英首相との首脳会談後の記者会見で、防衛システム配備について「過呼吸に陥るべきような問題ではない」と述べた。

 サミットでは地球温暖化対策が主要議題となる見込みだが、米国のミサイル配備計画問題が初日の協議を独占しかねないため、米側がけん制した。
 
 東欧へのミサイル防衛(MD)システム配備を米国が発表して以来、同国とロシアの外交関係は新たな冷戦状態とも呼べるほど冷え切っている。ロシア側は、ミサイルの目標となるのは唯一自国だと警戒しており、プーチン大統領は3日、米国がミサイル防衛システムの配備をポーランドやチェコにまで拡大する場合、ロシアは欧州をミサイルの標的にすることになると発言した。

 ブッシュ大統領は、プーチン大統領との会見を「楽しみにしている」と述べ、ミサイル防衛システムはロシアにとっての脅威とはならないと強調し、「(MD配備は)ロシアや欧州を人質にしかねない『ならず者国家』に向いたものであることを、彼にもう一度説明したい」と語った。

 また「わたしは冷戦は終わったと考えていることを、ロシア政府およびロシアの人々が理解することが重要だ。ロシアを米国の敵だとも考えていないし、共同作業を行える分野がたくさんあると思う。例えば、イランなど核兵器の拡散に関する問題などだ。ともに取り組める建設的な作業はたくさんある」とロシア側に協調を求めた。

■米、京都議定書後の枠組みづくりに積極的参加を主張

 同じ会見でブッシュ氏は、G8の主要議題となる地球温暖化対策についても触れ、「米国はいかなる新しい国際的イニシアチブにおいても主導的役割を果たす準備がある」と明言した。「米国は、京都議定書については主導してこなかったかもしれないが、京都議定書後の枠組みづくりにおいては積極的に参加するだろう」。京都議定書は2012年に期限切れを迎える。
 
 一方で、温暖化対策に関するすべての国際合意において、温暖化ガスの主要排出国に名を連ねつつある途上大国の参加、特に中国とインドの参加が不可欠条件だと主張した。「われわれの役割は、欧州の人々とインドや中国の人々の架け橋となること。(インドや中国に)会議に参加してもらうためには、国際的な目標を設定する機会を彼らにも与えることが重要だ。2008年までに温暖化ガスの排出国は歩み寄るべき。実質的な削減は、中国とインドの参加なしではありえない」と述べた。

 排出ガス削減の長期的目標の設定を拒否していることで、ブッシュ大統領は国際的な圧力に直面している。米政府は気候変動に関して何の取り組みもしていないという声に対し、米国では前年、経済が成長する一方で、温暖化ガスの排出量は減少したと反論した。(c)AFP/Phil Hazlewood