【5月31日 AFP】米国アラスカ(Alaska)州アンカレジ(Anchorage)で開かれている国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)の年次総会で、日本に対しクジラの致死行為的な調査捕鯨をやめるよう求める決議が採択された。日本を含む捕鯨を支持する27か国は採択そのものを拒否し、IWCにおける捕鯨国と反捕鯨国間の亀裂はいっそう深まった。

 ニュージーランドが提案した同決議は、日本が行なっている調査捕鯨で「クジラに対する致死行為」をやめることを求めたもので、40対2の大差で採択されたが、会議に参加した75か国のうち三分の一以上に当たる27か国が採択をボイコットした。

 決議に拘束力はないが、提案したニュージーランドのほか米国、英国、オーストラリア、フランス、南アフリカなど捕鯨に反対する国々がそろって支持した。反対はロシアとノルウェーの2か国のみ。中国は棄権した。

 ニュージーランドのクリス・カーター(Chris Carter)自然保護相は採択に関してAFPの取材に答え、「IWCにおける哲学的見解の差異が明白に分かれた」と述べた。「日本が自国沿岸でクジラにモリを打ち込んでいるだけでも十分ひどいことなのに、日本は実際、こちらまでやって来て我々のクジラにまでモリを打ち込んでいる」と非難した。

 日本側はこの採択を「憎悪による決議」だとして反論した。IWC日本代表団のグレン・インウッド(Glenn Inwood)報道官は、「われわれはこの会議で歩み寄りの精神を持って臨んでいたのに、反捕鯨派は憎悪による決議を思いとどまることができなかった」と語った。

 20か国以上が一度に採択を拒否したことは、IWC史上初めて。代表らの中には、採択拒否は亀裂を深めるだけで無意味だと批判する声もあがった。

 IWC参加75か国のうち、捕鯨擁護派と反対派の数はほぼ同数。IWCでは重要方針の変更に参加国の四分の三の賛成が必要と定めているため、両派それぞれの提案が可決に至りにくい。

 持続的な資源の利用に賛同する国際野生生物管理連盟(International Wildlife Management Consortium World Conservation TrustIWMC)のユージン・ラポワント(Eugene Lapointe)会長は、「誤った時期に、誤った論調で実施された、誤った決議だ。IWCの妥当性をいっそう損なった」と述べた。(c)AFP/P. Parameswaran