【モスクワ/ロシア 19日 AFP】ロシア治安当局は18日、ロシア南部の都市サマラ(Samara)で、ガルリ・カスパロフ(Garry Kasparov)氏が率いる反体制派組織「もうひとつのロシア(Other Russia)」が呼びかけたデモの参加者を強制的に排除した。「もうひとつのロシア」は、ロシアと欧州連合(EU)が当地で首脳会議を開催するのに合わせて抗議活動を計画していた。

 治安当局による強制措置は今年すでに4度目となる。ただ、前回までと異なり今回は警棒の使用は控えた。

 EU議長国ドイツの首相として首脳会議に出席したアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)氏は、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に反体制派の活動の自由を認めるよう求めた。

 しかし今回、ロシア治安当局は、抗議活動が拡大する芽を事前に摘み取ること成功したといってよい。

 「もうひとつのロシア」はサマラのデモに1000人の参加を見込んでいたが、実際の参加者は500人程度だった。カスパロフ氏もまた今回の抗議活動に参加できなかった1人。

 警察当局は18日、モスクワの空港でカスパロフ氏ら「もうひとつのロシア」の幹部を呼び止め、航空券の有効性に疑いがあるという口実で拘束して尋問を行い、結局カスパロフ氏らはサマラ行きの旅客機に乗ることもできなかった。

 他のデモ主催者ら数十人も、指名手配中の犯罪容疑者に容ぼうが似ているとか、偽造紙幣を所持している疑いがあるなどの理由で移動中の列車から降ろされたり尋問を受けたりした。

 スーパーコンピューターに敗れるまで負け知らずだったチェスの元世界チャンピオン、カスパロフも、ロシア政府の頭脳プレーの前に「チェックメイト」寸前の状態といえる。

 「もうひとつのロシア」などの反体制運動が盛り上がりを欠くもうひとつの理由は、プーチン大統領の根強い人気。原油の売却で得た潤沢な資金にものを言わせ、ロシア政府は翼賛的な議会と連携してテレビなどのメディアへの影響力を強めている。またプーチン政権発足前の1990年代の混乱期がもたらした国民の政治への無関心と幻滅もまた、プーチン政権の強権を許す理由の1つに挙げられている。

 写真は18日、サマラに向かうため首都モスクワ(Moscow)郊外のシェレメチェボ(Sheremetevo)国際空港に到着し、報道陣の取材を受けるカスパロフ氏。(c)AFP/STR

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