【ワシントンD.C./米国 29日 AFP】2006年の世界各地におけるテロの発生件数が前年比29%増加したとする米国の報告書が、30日公表される。イラクとアフガニスタンにおける民間人を対象にした攻撃の急増が背景にあるという。

 米新聞グループ2位のマクラッチー(McClatchy)は29日、傘下の新聞各紙で、米国務省のテロに関する年次報告書について、2006年のテロ発生件数は1万4338件で、前年の1万1111件から増加したという内容と報じた。この件数には、米軍に対する攻撃は含まれていない。

 人命にかかわる攻撃が増加し、少なくとも1人以上が死亡した事件は5800件に上ったとしているほか、全テロ攻撃のうち半数近い45%がイラクで発生したと指摘しているという。

 これらの数字は、イラク戦争をテロ撲滅の主要手段と位置づけ、戦費をめぐって議会と対立しているブッシュ政権にとっては、政治的に痛烈な打撃となり得る。もっともマクラッチー系列の各紙は、報告書作成にかかわった複数の担当者の意見として、数字は重要視されないだろうとの見方を報じている。

 報告書は議会の提出期限を迎える30日に発表される予定。同新聞グループによると、国務省のトム・ケーシー(Tom Casey)副報道官が前週、「通常の手順で(報告書の)最終確認を行っており、来週早々に発表する予定だ」と述べたという。

 このテロ報告書は、国家テロ対策センター(National Counterterrorism Center、NCTC)傘下の16の諜報機関が集めた情報を元に、議会の委任で作成された。ここ数年、報告書にミスが多発していることから、編集済みの統計が承認を受けた後、コンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)国務長官がジョン・ネグロポンテ(John Negroponte)副長官ら国務省スタッフとともに再度内容を確認したという。

 なお、中央情報局(CIA)や軍所属機関などの米諜報機関は、それぞれテロリストの「安全な隠れ場所」に関する個別の報告書を作成する予定。イラクは、米軍などによるイラク進攻以来テロリストの潜伏場所になっていると指摘する声が高まっている。

 写真は、インド・ニューデリー(New Delhi)で、All India Anti-Terrorism Front(AIATF、全インド反テロリズム同盟)が主催した集会でテロ撲滅を訴える子どもたち(2006年5月2日)。(c)AFP/Prakash SINGH