【パリ/フランス 21日 AFP】1960年代に故フィリップ・ド・ブロカ(Philippe de Broca)監督が指揮を執ったコメディ映画でスターの名声を得た俳優ジャン・ピエール・カッセル(Jean-Pierre Cassel)が長い闘病生活の末亡くなったことが20日、関係者の声明で明らかになった。

 声明によるとカッセルは、19日にパリ市内で亡くなったという。享年74。

 本名をJean-Pierre Crochonとするカッセルは、俳優/ダンサーのジーン・ケリー(Gene Kelly)によって才能を見出されて1957年の映画「ハッピー・ロード(The Happy Road)」に抜擢される。そして1960年にリリースされたブロカ監督の映画「Les Jeux de l’amour」と「Le Farceur」で名声を得た。

 110作品以上もの主演を務めた中でカッセルは、クロード・シャブロル(Claude Chabrol)監督、ロバート・アルトマン(Robert Altman】監督、ルイス・ブニュエル(Luis Bunuel)監督、リチャード・アッテンボロー(Richard Attenborough)監督らの作品にも出演を果たした。

 医者の父、オペラ歌手の母の間に産まれたカッセルは、1980年から90年代のテレビや劇場で充実したキャリアを形成していく。

 最近では俳優ロシュディ・ゼム(Roschdy Zem)の初監督作品「Mauvaise Foi」に出演した。

 カッセルの息子で俳優のバンサン・カッセル(Vincent Casse)は、イタリア人女優のモニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)と結婚している。

 2004年に発売されたカッセルの著書「A mes amours」では、一緒に仕事をした監督たちや米国の俳優フレッド・アステア(Fred Astaire)を主な題材として取り上げている。

 この訃報を受けてルノー・ドヌデュー・ド・ヴァーブル(Renaud Donnedieu de Vabres)文化大臣は、カッセルのことを「有名だけれど精錬されたオーラを持つ熟達した芸術家のまたとない例」であるとし「彼もまた亡くなった往年の人気者のうちの一人となってしまった。一人のコメディアンとして、50年以上も美しく偉大なキャリアを築き、芸術的な場面で才能を輝かせた非常に魅力的な人であった」と追悼の意を述べた。

 写真は、第59回カンヌ国際映画祭(59th Cannes Film Festival)に出席したジャン・ピエール・カッセル(2006年5月17日撮影)。(c)AFP/PASCAL GUYOT