【ソウル/韓国 12日 AFP】北朝鮮・寧辺(Yongbyon)にある核施設について、北朝鮮政府は発電用に建設したものだと主張している。しかし、同国の核開発計画の停止を目指す国際的取り組みの焦点となっているこの施設からは、1本の送電線も伸びていない。

■寧辺の原子炉は電力不足を補うには、小規模過ぎるにもかかわらず

 平壌(Pyongyang)の北96キロ(約60マイル)にある寧辺の原子炉は1987年に稼動した。出力は5メガワット。この出力では北朝鮮の電力不足を補うには明らかに小さすぎるうえ、米議会調査部(Congressional Research Service、CRS) が1月に出した報告書で、寧辺の核施設には送電線が1本も接続されていないことが明るみになった。

 それどころか、寧辺はその20年の歴史の中で、核兵器10個前後に相当するプルトニウムを生産してきたのではないかと、専門家らは語る。

 それでもなお北朝鮮は、1994年10月の米朝枠組み合意に基づき寧辺の原子炉を停止した場合、生産減となるとしてエネルギーの見返りを求めた。

 これを受け、重水炉に比べて核拡散の恐れが少ない核拡散防止型軽水炉2基の建設に国際コンソーシアムが着手し、また米国は当面の見返り燃料として年間50万トンの重油を提供した。

■プルトニウムの総生産量が、100キロと成らないうちに

 この「枠組み合意」は2002年、北朝鮮が秘密裏に高濃度の濃縮ウランを製造していると米国側が非難したことで、崩壊した。

 しかし、1994年の枠組み合意は、寧辺でのプルトニウム生産を8年間分、遅らせる効果をもたらしたと評価する声もある。

 米議会調査部の報告書によると、寧辺が稼動すれば、1年間に小型爆弾1個分の製造に足りるプルトニウム、6キロ分相当を生産できるという。

 1989年に70日間、原子炉が停止された際、再処理したプルトニウムを回収するために燃料棒が取り出されたと、米情報機関関係者らは推測している。

 また、1994年5月の原子炉停止中には、核兵器4個から6個分の製造を可能とする約8000本の燃料棒が取り出された。北朝鮮側は、2005年8月からの停止期間中にも、さらに8000本の燃料棒を取り出したことを公表している。

 6か国協議の米主席代表クリストファー・ヒル(Christopher Hill)国務次官補は12日、寧辺ではこれまでに、核爆弾6個から12個分に相当する計50~60キロのプルトニウムが生産されたと考えるのが妥当だろうと述べた。

 同次官補は、最新の合意による目標の1つは、「これまでに生産された50~60キロ(のプルトニウム)が、100キロとならないようにすることだ」と語った。

 北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議における今年2月の合意で、北朝鮮は国連査察官立会いの下、初期段階措置として4月14日を期限に、寧辺の原子炉と再処理施設を停止することになっている。

 マカオの銀行に凍結された北朝鮮関連資金の返還が進まず、北朝鮮側の初期段階措置履行も遅れているが、14日までにプロセスを開始するよう圧力をかける交渉は現在も続いている。

 写真は人工衛星から撮影した北朝鮮・寧辺の核施設(2002年2月22日撮影)。(c)AFP/SPACE IMAGING